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食い違った「公称」部数

 出版社が発表する雑誌発行部数が「公称」で、広告クライアントを意識した営業戦略上の数字であることは、業界に携わる関係者なら百も承知のことである。

 その公称部数の表記を巡って、先日、小紙記者と意見が食い違った。

 その記者は自らが取材した記事中、雑誌部数の下にカッコ付で「公称」と入れてきた。「事実と違う部数であることを、何らかのかたちで読者にわかってもらうため」そして「『新文化』の姿勢がそうであることを示すため」というのがその理由である。

 これまで、こうした表記は過去にあったかもしれないが、少なくとも同日付の記事中にそうした表記はなかった。そして、読者の大半は業界人--いわゆるプロであるために、私はその必要はことさらないと思った。

 とくに出版社が行う新雑誌創刊の商品説明会などの発行部数は、その多くが「公称」で、事実と違う場面がある。

 情報垂れ流しの記事を容認するつもりは毛頭ないが、それはいま、暴露的な行為にも等しいのではないか。

 「公称」は書店にもある。新規開店時の売上げを取材するために申込んだ時のこと、ある書店では、開店前にも関わらず、本紙に初日売上げを示してきた。さすがに、これには閉口し、記事を書くことを止めてしまったが、こうした例は少なくない。

 数年前、「少年マガジン」が「少年ジャンプ」を発行部数で抜いて、朝日新聞の夕刊、一面を飾ったことがあった。記憶に新しいところである。

 後日、朝日の記者から聞いたことだが、その部数の“ウラとり”作業は「そんなんでいいのかなあ」と思わせるものだった。

 結果は記事の通り、部数逆転の事件ではあったのだが、そのプロセスと、他の雑誌でも同様の取材・掲載があり得るのか、疑問が残った。

 一般読者に視点をおく朝日と、業界のプロに読んでいただいている小紙では、そのスタンスが違うのは当たり前なのだが、出版社の経営に影響を及ぼすような行為は、軽率にはできない。中小出版社であれば大打撃となる。

 襟を正して臨む小紙の記者の姿勢は充分に理解できるし、もっともであるとも思う。

 結局は、出版社からの伝聞形式をとって合意に至った次第である。歯切れの悪い話だ。

編集長 丸島基和

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