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定年退職者の矜持

  今年、大手取次会社2社で計180人の定年退職者がでるという。退職日は各社毎の規定により異なるが、中堅の同業他社を含め200人以上が取次会社を去ることになる。

 高度成長期における出版流通に体をはって支えてきた世代である。昭和42年頃はいまのような近代的施設はなく、夏にはランニングシャツにジーパン姿で重たい本を運び、体を壊して1週間で辞める新入社員もいた。

 今年、定年を迎えるある取次関係者は「入社するのに試験なんてなかった。面接では体を触って『大丈夫そうだ』となれば、すぐ採用。そのまま現場にでました」という。

 労働環境はいまと比べようもないぐらい劣悪だったようだが、それでも朝・昼食付きで給料がもらえることが魅力だったそうだ。当時、残業代の120〜130円を目当てに夜も働いたという。

 取次会社にはシャワー室や理髪店があった。散髪代は半額を会社が負担する取次会社もあった。

いまは本社の建て直しや移転でその姿をみることはできないが、トーハン本社の地下1階には休業中の理髪店があり、面影が残っている。

 「酒を飲み、ケンカも絶えなかった。当時の同期はもう80%ぐらい辞めちゃってる。退職者には途中入社の社員も多いから、当時一緒に苦労した人は少ない」
だからこそ「たたき上げのプライド」もある。

 「1日中、パソコンの前に座り、システム化に依存する若いやつが多すぎる。本も触らないで、文句ばかり。昔の話しができる先輩もいない」と悲しげ。

 書店の注文に応えるための“取り次ぐ”という流通の本質を問う。身をもって体験してきた男たちの言葉だから説得力もある。

 少し前なら出版社や販売代行会社などに再就職する人も少なくなかったが、いまはその選択肢も狭くなり、業界外に流れてしまうことも多い。
もったいないと思う。

ある出版社が採用試験の後、面接で「ダメだ」と思ったら、丁寧に受け答えをするそうだ。「気持ちよく帰っていただき、また読者になってもらう」のだそうだ。「社の印象を悪くしてはいけない」という。

 「いける、合格」と思う人間には、厳しく応接し、窮地に追い込まれた対応をみる。面接は時代・業種によってこうも違うものか。

 

社長 丸島基和

(2008/4/30)

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