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70代への作法

 松信泰輔氏、田中治夫氏、服部敏幸氏――出版の隆盛期を築いた功労者が他界され、時代が移り変わっていくような気がする。大きなニュースが多い今年だから特にそう思えるのかもしれない。お三方は私にとっては雲の上の存在だったが、節目節目にお会いし、お話しする機会は幾度となくあった。

 1000人以上が参集した服部氏の「お別れの会」には業界のOBなど、大先輩が多く、私などが居る場所もなかったが、近くにいた出版社のOBの方は「もうこんな時にしか会えないようになったかあ」と呟き、会場を見渡していた。

 その方と他愛もない話しをしていると、取次会社の大先輩が来て、自ら名を名乗って輪に加わった。いまさら自己紹介をしなくても誰もが知る超有名人なのにである。

 「なんで名前を言うの?」と出版社のOBが尋ねると、「名前がすぐでてこない70代の方への作法です」という。年を重ねると顔がわかっていても名前が思い出せない方に恥をかかせてはいけないという配慮である。

 私は40代にして既にその域に達しているので、言いたいことは良く分かる。名前で呼べないから声をかけられず、日頃の感謝の気持ちも伝えられない。それより自ら名乗り出てご挨拶をと思う。

 実はこんな話しは出版社や取次会社、書店の中堅の方でもよくあるらしい。しかし、その取次会社の大先輩は続けてこう言う。「さきほど名前を名乗っても思い出してくれない人がいたんです。これは辛いですよ」
 「・・・」

 定年後、仕事の第一線から離れ、人間同士の本当の付き合いが始まる人もいる。昔、小学館のある取締役から「取材であっても長い付き合いができるように努めなさい。君のためになるよ」と言われたことがある。

 老いて大切なことは「孤独にならないこと」だとテレビのなかで訴えている人がいた。確かに周りに人がいる人は徳がある。そんな人を見習いたいと思う。

 

社長 丸島基和

(2008/10/1)

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