出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ 出版業界 専門紙 新文化

「日経新聞の商店街論」

 何年前だったか、出版社の方の紹介で日経新聞の記者と食事をしたことがあった。話しは国内外の経済や犯罪、アメリカの自由主義政策と盛り上がった。小泉純一郎首相(当時)が推進する規制緩和や商店街、本屋さんの将来を語り合った。

 はじめは懇親のつもりで足を運んだが、話しが進むにつれ、経済も地域社会もアメリカに倣うべきというその記者とは真っ向から意見が対立し、最後は声を荒げてケンカ腰に議論していた。商店街を歩くのが好きで、住まいも十条銀座商店街のある十条(東京)に引っ越していた私にとって、全てが経済原理から消費者利益を楯に商店街不要論を主張する氏の論理には賛成しかねた。

 「なに、言ってんの。歴史や伝統や文化っていうもんがあるでしょ」「それはアメリカにもあるでしょ。そもそも文化なんて変わるもんでしょ」「アメリカにはない文化もあるでしょーよ。あなたは一体、どこで生まれたの」とこんな感じだった。

 その後、経済産業省は商業統計で「出版産業」を「コンテンツ産業」というカテゴリーの中に組み入れて調査をするようになり、政府はe―JAPAN計画から出版・新聞・テレビ・ラジオ・映画・アニメ・ゲーム・ネットなどを融合させる方針を出し、そのための法改正を行ってきた。

 日本のコンテンツ産業の市場は約11兆円。世界の市場110兆円の10分の1に当るという。東京都の石原慎太郎知事が「アニメは日本の財産」みたいなことを言った翌日、映画「千と千尋の神隠し」がアメリカでアカデミー賞を受賞した時に、日本政府や行政の働きかけがあったと確信した。ちょっと怖くなった。

 そして、出版業界にもその波が押し寄せ、いろんなことがあった。再販問題もその一つだった。書店についてはここで言うまでもない。酒屋もこの10年間で5万4000店が閉店した。それでも2007年に14万9700店だった酒屋は昨年3月には15万4000店に増え、消費者の満足度を向上させているようだ。

 ただし、「日刊 帝国ニュース」によると、その裏では「大手量販店の販売価格は中小の酒屋の仕入額より安い」という現象もあるという。こんなことが消費者利益といえるのか。大手量販店はチェーン展開して地場の酒屋の足場を崩していく。

 いまは日経新聞の記者の予言通りにことが運んでいるようにもみえる。その記者は頭が良い人だけど、その善悪を判断できてない。競争三原則は「品質」「価格」「サービス」だが、それより大事なものもある。

 

社長 丸島基和

(2009/5/29)

バックナンバーへ

購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お問い合せ
メール送信
リンク

新文化通信社