出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ 出版業界 専門紙 新文化

デジタル化に欠ける戦術

 1月の新年会ラッシュも13日の金文会で一段落しようとしている。
毎年のことだが、企業のトップが各種団体の長を務めていることから多くの方が2度、3度と同じ挨拶を聞くことになる。

 今年、各氏の挨拶で共通していたのは「国民読書年」。その事業に全体での取組みが呼びかけられた。既にいくつかのイベントや取り組みが発表されているが、国民に伝えきれているかといえば、少々疑問が残る。

 少なくても私の周りにいる業界外の方々のなかに、それを知っていた人はまだいない。

 昨年は国会議事堂に行って、この運動の継続審議をある党主に陳情したこともあった。そこでは「事業計画の物足りなさ」を指摘され、読書年の結果も出ていないいま検証もせず、超党派の議員を説得することは困難。都合が良すぎると怒られた。

 業界トップの方々によると、国民読書年のピークは秋の読書週間が始まる10月27日(文字・活字文化の日)に合わせるというが、年の瀬も押し迫ったころというのはもったいない、と思ってしまう。もっと早く盛り上がればその後の展開も議員への陳情の仕方も変わるのに・・・。

 次にトップの挨拶で多かったのは、「出版コンテンツのデジタル化」である。グーグルのブック検索で浮上した権利上のトラブルを業界問題として捉えていた。しかし、今後問題になるのは米国・アマゾン・ドット・コムが発売した電子ブックリーダー・キンドルの件だ。近く日本版が発売されることが予想されるが、業界3者の展望が見えない。

 出版各社の売上げはどの程度上がるのか? 紙媒体との競合は? 書店への影響はどの程度なのか? 書店の店頭販売は可能なのか? 価格は米国と同じように半額程度なのか?

 かつて電子辞書は紙媒体に代わって学生などに普及した。しかし、その開発からコンテンツ提供のロイヤリティー決定まで、そのイニシアティブはハードメーカーにあった。1997年にある出版社のフルコンテンツ型の電子辞書ができてから、同業他社がコンテンツ提供でメーカー側とその開発に乗り出していく。

 つまり、出版社は競争意識から否応なく参加せざるを得ない状況に置かれ、それからは紙媒体の改訂出版が困難になった。そして10年以上が経過してその伸びが止まった。今回、キンドルは出版社の主要取引先でもあるアマゾンが発売元であるから、やはり出版社は強気の交渉ができない。

 こうした状況を踏まえて出版界は国内のハードメーカーと業務提携をして独自のハードを作る用意はあるのか。書店で販売し、3者共存の道を開けるモデルを作れないか。

 また、他のハードメーカーが再度参入してきた時、出版社主導で事を進めるためにはコンテンツ提供の標準化をいまから行っていなくてはいけない。

 デジタル化については権利問題はもとより、出版界の戦略・戦術が求められていると思う。でないと、また3者が苦労することになる。

 

社長 丸島基和

(2010/1/12)

バックナンバーへ

購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お問い合せ
メール送信
リンク

新文化通信社