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電子、電子、また電子

書籍だけでなく、教科書まで電子化しようとしている。
教科書販売を手がける書店にとっては一般書籍の電子化と同じくらい深刻な問題である。

総務省の原口一博大臣は、昨年末に公表した「ICT維新ビジョン」のなかで、「2015年までに小中学校の全生徒に電子教科書を配備する」と盛り込んだ。

それに続くように、ソフトバンクの孫正義社長は2月、東京で行われたパネル討論会で「電子教科書は1台2万円ぐらい。1800万人の学生全員に配ると3600億円。一度配れば教科書予算は毎年400億円でいい」「中学に入ったら新機種をあげる。携帯電話会社のようですね」と話し、書店の不安は一気に高まった。

なのに、先日行われた全出版人大会で国立国会図書館の長尾真館長は、蔵書のデジタル化計画とともに、教科書の電子化に触れ、「生徒と教科書との対話≠ノよって生徒を解答に誘導することも可能になる」などと語り、新時代のデジタル教育論を提唱した。

これには一部の出版社からも「成長過程の子どもたちにパソコン画面だけで授業するなんて、体にも心にもいいはずがない」という反発する声もある。「心を失くしたような殺人事件が多発して社会不安を募らせているのは〜」なんて話にもなっていく。

電子辞書が台頭しているいま、ベネッセなどが啓蒙する「辞書引き運動」が盛んなのは、辞書を引くリアルな行為が子どもの好奇心や調べ学習に良いからである。それをお父さんやお母さんが認め、日本中に広がった。

授業の前に行う「朝の読書運動」も、知識だけでなく、心の豊かさを教育の場で育てることから全国に普及した。

国民読書年にあたって、出版界が本の価値を再度認識してもらいたいと各種催しを企画しているのに、総務省も国立国会図書館も他業界の民間会社もその意味を全く分かっていない。

出版活動の社会的意義を年に1度確認し合う同大会は、いつも大会声明が読み上げられ、身が引き締まるような思いでいた。が、今回はなんか違った。

長尾館長は「電子図書館サービスが出版界に不利益をもたらすのではないかという心配があるようですが、有料の電子図書館情報へのアクセスモデルを(3省の懇談会に)提案している。これによって相当な収入が出版界にもたらされるとともに電子書籍の販売推進にも繋がる」とも語っている。

デジタル化は時代の流れであることは否めないが、教育のあり方も出版ビジネスの基盤もなんだか、知らない誰かに勝手に決められているようで不愉快だ。

 

社長 丸島基和

(2010/5/18)

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