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裏切られた10年!?

 今年は出版社が取組む電子書籍問題から、書店、取次会社との関係が危ぶまれた。出版社はコンテンツ配信で近い将来、ビジネスチャンスとなる可能性があるが、書店や取次会社は中抜きされて顧客を失う。面陳列やフェアなど長年にわたって出版社のお願いを聞いて販売し続けてきたこともあり、裏切られたと口にする書店もあった。

 かつて、出版社がコンビニエンスストアに雑誌を流通させる時も、ブックサービスから読者に直接販売する時も書店の危機感はあった。当時は共同行為が許されていたから日書連の力も強かった。水面下でのせめぎ合いもあった。

 いまは団体が個別商取引に口を出すことが禁じられているから、書店の声は出版社や取次会社に届きにくくなった。東京書店組合が紀伊國屋書店や丸善などのトップを特任理事に迎えても業界内のことはともかくも、表向きには書店問題を声にすることは難しい。

 そんななか、新規出店したある書店の初期在庫の支払猶予が「10年」であることがいま書店の間で話題になっている。取次会社から誤送されてきた伝票を見たという書店人の証言から口コミで広がっている。

 少し前に5年、7年という話しは聞いていたが、10年は破格である。もしこれが本当であれば、「取引は個々」というレベルではない。もはや「差別取引」というほどのものである。

 大きな書店ができれば町の書店のダメージは大きい。今ですらギリギリで経営している地場書店にとって、大型書店との競争に勝てる要素がない。長い間、1冊の客注対応から信用を得てきた地場書店の顧客が根こそぎ獲られていく。まして取引している取次会社がこの支払猶予に応じているとなれば、地場書店が裏切られたというのもうなづける。

 「これまでなんのために書店をやってきたのか分からなくなってしまいました。もうやる気がしない」「業界はこんなことでいいのか」。その地場書店の怒りは収まらない。

 出版社のなかには、ホームページでネット書店とリンクを貼ったり、書籍目録のなかに読者への直接販売も案内していたり、書店人を感情的にさせるものばかり。

 昨年は廃業書店の売場面積が新規出店のそれを超えた。廃業問題は出版社や取次会社でも深刻に受け止められているが、地場書店を支援する具体的な策はない。取次会社が特別条件を出して得る新規出店による架空の売上げは、既存店を破壊していく。

 実態のある取引きをしないと、双方だけでなく書店界全体がダメになる。

 

社長 丸島基和

(2010/12/27)

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