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疲れる本、デフレ病の出版社

 電子書籍の騒動が少し沈静化してきたと思っていたが、書店の店頭はいまだ新しい業界(産業)関連本が次から次に入れ替わっている。先日、そのなかの1冊を購入して読んでみたが、とっても疲れた。

 売上げが下がり続けて、新刊洪水や大型書店の乱立、返品率がどうのこうの、数字を並べてありとあらゆるマイナスを書きたて、この業界の古い商慣習の弊害を指摘している。

 再販制と委託制を一緒くたにして、取次会社の業務も含めて誤解している箇所も相当にある。そして、要するにビジネスモデルが成立していない、リーダーがいないと言っている。といって提案らしきものは何もない。

 どこかの業界関係者にでも聞いて書いたのかもしれないが、読みながら、反論してしまうから肩が凝る。「この誤解って編集者が誤解しているのかな」、なんて思うから読み進むほどに、「あと何ページ残っているか」確認する回数が増えてくる。

 電子書籍が産業革命を生み、企業の再生産を高めるって書いてあるが、全国の書店や地域の読者の本当の利便性、著作隣接権などの問題は書いてない。全てを否定するつもりは毛頭ないのだが、「じゃあ、どうしろっていうんだ」とつぶやいてしまいそうになる。電子事業を推奨し、表現の自由まで言及しているのに、その著者は本を通じて表現している。なんとなく矛盾も感じながら、それでも読んだ。

 それは「業界村」の実態とネット上のコンテンツ販売に大きなギャップがあると感じ始めていたからだ。ネット上では高額なコンテンツが売れている。1万円以上するコンテンツが何千も何万も課金販売されている。

 出版社は雑誌でも単行本でも依然、安くしようと必死である。なかには10円単位の定価設定で長い議論になるという。高額なコンテンツを購入しようとする読者を前に、出版のプロがそんな会議を行っている。

 全国紙に1ぺージ広告を打っている業者が、8枚組みの落語CDが何万も売れている一方で、出版社は何百円の分冊百科を創刊している。出版社はデフレ病にかかってしまった。

 出版社の営業マンだって、何万円もするドライバーやアイアンセットを買っているのに、書店の市場は1000円ちょっとと決めている。そんなことが気になっていた。ネット上の目に見えない市場はいかなるものか、それを読みたかったが、電子書籍を薦めるそれらの本には何も書かれていない。

 電子は、アメリカみたいに半額にすれば良いと言っているだけ。本を読んだが、疲れただけだった。これじゃ売れないかもと感じた。

 

社長 丸島基和

(2011/10/11)

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