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人と本気で接するということ

 先日、大きな出版社のOBである方が他界された。私が高校生の頃からお世話になった方で、父のような存在だった。仕事柄、訃報は日常的に取り扱っているが、その時は辛かった。

 私が大学生の時には、(本当の)父がやっている仕事の大変さを教わり、社会人になって仕事への姿勢を、この新文化に入ってからは、出版業界のイロハを教えていただいた。

 視点の定まらない、取材の薄い記事にはとても厳しく、そうでない記事にはわざわざ電話かけて下さり「まあまあだった」とも言ってもくれた。

 その人が50代からゴルフを始めるに際し、「毎週土日、朝7時、あの練習場にきてほしい」といわれ、絶句しながら、私は用事がなければ毎週、何年も通って一緒に打ち続けた。

 古びて狭いその練習場には、当時、中堅取次会社の社長も出版社の方も同じ時間に訪れていたが、「こういう時は話しかけないのがマナーだ」と言い、その社長を横目に黙って打った。しかし、業界の会合では私を引連れて挨拶をさせてくれ、長話もさせてくれた。

 「名刺交換は誰にでもできるが、2回目に会う時が難しい。今日挨拶した方に早く会えるようにアポをとった方がいい」「その人が何を一番大切にしているかを掌握しておけ」

 寿司屋では、「今日は会社の経費でお前にご馳走するが、トロとウニは高いから注文しちゃダメだ。お前はまだそんな身分じゃないんだ」「はい」

 故人は朝も昼も夜も、休日も、心が折れそうな時もずっと傍でアドバイスしてくれた。私が生意気を言うと大声でドヤされもした。あそこまで親身になって人とコミットできる人は少ないと思う。
 仕事上の上辺ではなく、本気で人に接していけと教わったような気がする。

 通夜は小雨のなか、しめやかに営まれた。私はこれまでのお礼をしに行ったつもりだった。きっと参列した多くの方がそうであったのだろう。

 いまも背中から見られているような気がしてならない。ありがとうございました。

合掌  

 

社長 丸島基和

(2012/5/18)

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