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霊安室にいた父

 両親に対して敬語を使うようになったのは、いつからだっただろう。

 小社の前社長として接する時は言うまでもないが、実家でもいつからかそう接していた。それが私にとっては自然だった。

 心臓にあった動脈瘤が破裂して父が亡くなった11月21日の午後2時2分、私はプレオープンした紀伊國屋書店武蔵小杉店で取材をしていた。Beaconを活用した新サービスの取材に夢中で、ポケットのなかでブルブルしている母からの電話にも気が付かなかった。

 父は霊安室にいた。遺体はまだ温かかった。母と妹と座り込んでいる間にも、仕事の連絡は途絶えない。病院のなかで霊安室は電話をしても良いエリアだということを初めて知ることになる。

 これから父をどうやって自宅に運べばいいのか、誰に知らせるべきか、密葬にすべきか、これまで取材した記事を明日から書くことができるのか、母の様態は、お昼ご飯を食べてもらわないと――頭のなかは混乱していた。

 葬儀会社との打ち合わせは午後9時ごろから始めることができた。遺族の心に寄り添いながら接してくれたことに感謝しながらも、葬儀の件については相談する人もいないまま、あらゆることで即決を迫られた。そんな時にいただいた作品社の和田肇社長からの電話は何にも代えがたいものだった。

 翌22日からは出社して取材していた5件の記事を書きながら、葬儀の見積書に目を通すような忙しさだった。価格が表示されていない棺や祭壇のカタログに苛立ちも感じたが、早く実家に戻りたいという思いでキーボードを叩いた。

 幼少時代、父の思い出は多くない。家にいることが少なかったから、数少ない思い出だけが鮮明に残っているのかもしれない。

 今回、葬儀に当たって、業界関係者の皆さまから頂いたご厚誼がこんなにもありがたいものだということも知った。弔辞を読んで下さった日販の古屋文明会長ほか、ご参列していただいた方々、香典をわざわざ送ってくださった方々、生花、弔電、様々なかたちで対応してくださった方々には、心から感謝したい。

 この場を借りて、御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 

社長 丸島基和

(2014/12/2)

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