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「本の学校・出版産業シンポジウム2009」開催、責任販売 書店との溝浮彫り
 

本の学校は7月11日、東京・有明の東京ビッグサイトで「本の学校・出版産業シンポジウム2009 in 東京」を開催した。第一部のメインセッション「出版産業の課題解決に向けて‐これからの取引・流通・販売のあり方とは」には、当初の予想を大幅に超える1000人以上が来場。セッションではとくに、返品増の苦境から脱するために出版社や取次会社が進める責任販売制に対して、返品削減のメリットが見出せない書店側との溝が浮き彫りになった。

出版産業シンポジウムは9日から東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「東京国際ブックフェア2009」に併せて行われたもので、今年で4回目を迎える。第一部には筑摩書房の菊池明郎社長、丸善の小城武彦社長、日販の安西浩和常務、トーハンの近藤敏貴専務、NET21の田中淳一郎副社長(恭文堂書店)がパネラーとして登壇。文化通信社の星野渉取締役編集長の司会で進められた。

初めに取次会社と出版社が責任販売を進める理由などを説明。日販の安西常務は「返品が悪だとすれば、返品した人が損をする仕組みを恒常的に通常取引のなかに導入する必要がある。書店だけではなく取次もリスクをとってやっていく」などと話した。トーハンの近藤専務は「再販制度を築いた時点でこんな返品率は想定していない。50、60%の返品では事業構造が壊れる。三者の分け前もひずみが出るのは当り前。今のやり方がベストとは思っていないが責任販売制など新しい取引にチャレンジしている。利益を再配分する原資は返品削減にしかない。今の制度をいい形に直していくのがいい」と語った。

菊池社長は出版社の立場から、委託制度の限界と責任販売の必要性を主張。委託制度のなかで、取次会社のパターン配本の精度アップの余地があることを示唆しながら、ノールール化している委託制度と書店収益の改善のために責任販売は必要との見解を示した。

書店側の意見としては、小城社長が出版界のマーケティングの弱さを指摘。とくに、「小売は余れば返せばいいと委託に甘えている」と返品増の理由の一端を説明。「書店が客を理解してどういう本を誰に売るか、そういう力をまず書店がつけるべき。そのうえで、書店もリスクをとって収益が取れる環境を構築していくべき」と責任販売に賛成。

こうした責任販売必要論に対し、田中副社長は責任販売に頼らなくとも「配本の精度を上げることで返品は下がる。委託制度は維持できる。見本配本とはいわないが新刊委託は必要」と問題提起。出版社、取次、書店の三者契約による新たな取引制度を構築して、委託制度と並行させてはどうかと投げかけた。さらに現状の責任販売については「書店の責任で仕入れるためにも、納得できる選択肢がほしい。なぜロングセラーを責任販売にしないのか。書店がやる気を起こす仕組みをつくってほしい」と訴えた。

配本の問題については、近藤専務が「精度をあげれば返品改善はまだできる」とし、「そのイニシアティブを誰が取るか。書店にも商品を発注してもらうが、市場データをもっている取次会社にそのコントロールを任せてもらうほうがいい」と説明。責任販売については、「(書店の)商品の選択と供給は保証しないと新しい仕組みはできない」(安西常務)と説明した。

さらに、田中副社長は市場在庫の偏在を指摘し、取次会社が調整する役割があると強調。近藤専務と安西常務は「偏在するケースはある」と認め、「それを解決する一つの施策が責任販売でもある」と話した。

また、レベニューシェアの出版界において、これからの業界三者の利益配分についての議論に進むと、薄利に悩む書店の現状が露に。「書店は人を育てなければならない。人件費を50%上げるために、粗利で35%はほしい。買切り商品の場合は、仕入は60%以下にしてほしい」(田中副社長)。「書店の参入が少ないのは儲からないから。男性の書店員が結婚を機に退職してしまう。粗利で35、40%ないと給料を上げられない」(小城社長)。

(本紙2009/7/16号掲載記事から)
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