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35ブックス、1点平均300部弱の受注に/予定を大きく下回る
 

書店のマージン改善と返品減少を目指した出版社8社の「35ブックス」の受注状況が、1点平均300部弱(26アイテム)となっていることがこのほど分かった。8社は受注数が伸び悩んでいたため、8月末までだった注文の締切りを9月末まで延期していた。

現在まで最も注文が取れたとみられるのは、河出書房新社の「南方熊楠コレクション」(全五巻セット)で約500部。当初予定していた1000〜1500部の初版制作ラインを大幅に下回る結果となりそうだ。

ただ、8社は全点を復刊・重版する方針を固めており、引き続き受注活動を行っていく。

今回の取組みの仕掛け人である筑摩書房の菊池明郎社長は「読者や書店に対して、企画の切り口や商品力など、企画全体の詰めが甘かった。返品の歩安の率ももっと緩めた方がよかったのかもしれない」と注文が伸び悩んだ理由を分析。「しかし、まず一歩踏み出したことで、取次会社に流通面における新たなシステムの構築を促すこともできた。また、出版社、書店の双方にとって、責任販売に取組むうえでのいい訓練になったのではないだろうか」と成果も報告する。

8社共同の企画「35ブックス」の継続については、来年2月頃に8社で結果を総括し、その際に今後の方針も検討する。ただ、筑摩書房は1社でも、こうした取組みを継続していく。まずは来年2月頃にも当初の予定どおり、『幕末』第二版(1万2000円)を復刻・重版する。半年程度の時限再販商品に指定し、買切り・高マージンもしくは歩安入帳・高マージンの2通りを考えている。

また、毎年発行している『文庫手帳』は、来年からは非再販商品として、一部買切り・高マージンもしくは高マージン・歩安入帳などの条件を導入していく見通し。さらに、来年70周年を迎える「ちくま文庫」についても、復刻版フェアを高マージン・歩安入帳などの条件で実施する考えもあるという。

今回の取組みの結果からみえたことは、中小出版社と書店の双方がウィンウィンとなる取組みの難しさ。中小出版社は復刻・重版という商品を提案してはいるものの、書店は商品としての力に不安を抱いたため受注数が伸び悩んだ。

書店はベストセラーやロングセラー商品の高マージン化を望んでいるが、中小出版社にとっては市場が縮小しているこの時期に、収益の柱となっている本で実施することはできないのが正直なところのようだ。新刊に至っても同様で、商品の売り伸ばしには「委託(返品可)」が最も効果的であることを出版社は理解しており、買切りによる書店側の「売り切り」の姿勢を恐れてもいる。

しかし、新たなビジネスモデルを構築するには、出版社も書店もある程度のリスクをとって臨まなければ結局は今のまま変わることはできないだろう。1つの考えとして、高マージン・歩安入帳の条件を新刊商品に柔軟に適用しながら、成功事例を模索していくのもいいだろう。今回、書店の反応は厳しいが、トライ&エラーを重ねていくことこそが、新たなビジネスを育む土壌となる。その意味では、今回の取組みは、「成功」への第一歩でもあるように思われる。

「35ブックス」の出版社8社は次のとおり。河出書房新社▽青弓社▽筑摩書房▽中央公論新社▽二玄社▽早川書房▽平凡社▽ポット出版

(本紙2009/11/5号掲載記事から)
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