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コミックレンタル導入してもセルの売上げ影響なし/小学館、CCC・MPDと協力調査
 

コミックレンタルを入れてもセルの売上げは落ちていない−。小学館がカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)レンタルユニットとMPDの協力を得て、このほどまとめた「コミックレンタルによるセルへの影響調査」で明らかになった。コミックスのセルとレンタル双方の売場を持つTSUTAYA6店舗において、小学館の九作品の販売冊数・レンタル回数を18カ月に渡って調査。その結果、セルの売上げは下がらず、セルとレンタルが棲み分けしている実態が分かった。棲み分けが可能になったのは、発売日から一カ月間は新刊本を貸与できない「貸与準備期間」を設定したことが大きく機能しているという。今回の調査を担当した小学館の佐藤隆哉取締役は「レンタルが有料試し読みの役割を担っている。今後はそのユーザーをセルへ誘導する方法を検討して、潜在読者の掘り起こしにつなげていきたい」と総括する。

TSUTAYA6店で18カ月追跡/1カ月の準備期間で棲み分け

同調査は2008年6月〜09年11月、小学館の「少年向け」「少女向け」「青年向け」からそれぞれ3作品(合計9作品)を選出し、新刊のセル(販売冊数)とレンタル(貸出回数)の動向を追跡したもの。調査店舗は全国のTSUTAYAのなかから、セルとレンタルの売場を持つ六店舗をピックアップ。さらに、コミックス売上げが六店舗と同規模の店を抽出し、セルの売上げ動向も比較している。

同時に、TSUTAYA会員向けのTサイトにおいて、「コミックレンタルに関するアンケート調査」も実施。09年12月4日〜8日、Tサイト登録者の13〜49歳の男女にパソコンとケータイの両サイトを通じて調査した。回収サンプル数はパソコンが881人、ケータイが887人。

6店舗における9作品の動向調査によると、期間中の全販売冊数の大部分を発売から1カ月(貸与準備期間)の間で占めており、レンタル開始以降のセル売上げは一ケタ程度で推移している店が多い。同規模店も同様で、セルの売上げをレンタルが減少させているという直接的な原因は見当たらなかった。

54の調査データ(9作品×6店)のなかから例示すると、調査店Bとセルのみの同規模店における『絶対可憐チルドレン』の13〜18巻の発売3カ月間売上げは、「13巻」=11冊(同規模店13冊)、「14巻」=29冊(33冊)、「15巻」=46冊(33冊)、「16巻」=43冊(33冊)、「17巻」=36冊(27冊)、「18巻」=36冊(28冊)。その間の3カ月間レンタルは「13巻」=16回、「14巻」=18回、「15巻」=12回、「16巻」=12回、「17巻」=12回−。

「13巻」は別途、特装版も発売したため、冊数は少なかった。「14巻」から「15巻」にかけてセル売上げが上がり、レンタルが減っているのは作品の映像化でセルの配本冊数が増えたため。セルへの乗り換えと言い切るデータはないという。

こうした各店の九作品の販売・貸出データを比較して、佐藤取締役は「セルの売上げは落ちていない。このデータをみていえるのは、セルとレンタルは読者によって使い分けられているということ。しかもセルからレンタル、レンタルからセルへという乗り換えも少ない」と分析する。

さらに、MPD提供による、09年の1年間における6店の書籍売上げとコミックス売上げの前年比を比較した「補足資料」でも、レンタルの影響はみえない。コミックスを含む書籍全体の売上げ前年比よりもコミックスの前年比が下回っていればレンタルがセルと競合しているとみられるが、6店の72カ月のデータではコミックスが52カ月上回っており、書籍売上げを下回ったのは20カ月だけ。

また、TSUTAYA会員のクラスタ分析からみた「セルとレンタルのユーザー像」については、セルの指向が強いのは10・20代男性、レンタル指向が強いのは20・30代女性。各作品の母体となる掲載誌を意識しない読者が多いという。さらに、アンケート調査からみえた「セルとレンタルのユーザー像」については、「買いたいコミックス」は「手元に置いて何度も読みたい作品」、「借りたいコミックス」は「一回読めばいい作品」という回答が圧倒的に多かった。レンタルを選ぶ理由については「買うほどではない作品を含め、たくさん読める」がトップで、次が「買うより安い」。

佐藤取締役は「トータルでは作品への接触機会は増えているので、レンタルはコミック読者の拡大再生産に適していると言えないか。レンタルからいかにセルに誘導するか。出版社とコミックレンタル店にはレンタル向けの新たな企画や商品開発、仕掛けなどが求められるのではないか」とまとめている。

(本紙2010/5/13号掲載記事から)
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