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深夜プラス1、29年の歴史に幕/ミステリー専門店の草分け
 

東京・新宿区の神楽坂下にあるミステリー専門店のブックスサカイ深夜プラス1が8月31日、自主廃業の道を選び、29年間掲げた看板を下ろしたミステリー専門店の草分けとして1981年にオープン、他店との差別化を図り、マンガや雑誌も充実させてきた。

90年代初頭の海外ミステリーブーム時は18坪の店内が「歩けないほどの混雑ぶり」だったという。しかし、同店の在庫構成は、ミステリーが3割弱で、漫画と雑誌が5割以上。売上比率では「ミステリーは1割にも満たない」と浅沼茂店長は説明する。

「若い人にミステリーの魅力を伝えられず、読者が一向に増えなかった。とはいえ、漫画と雑誌があってこそやってこられたのだが、この不況でそれすらも厳しくなってきた」(浅沼店長)。88年刊行、91年映画公開の『羊たちの沈黙』のような、ミステリーのマーケットを牽引する作品に恵まれなかったことも衰退の一因だと同氏は指摘するが、経営を続けていく方策はなかったのだろうか。

「何もない。よく〈差別化〉といわれるが、それをしてはいけないということが、今回分かった。うちは十分やってきたつもりだったが、差別化をすると絶対数が出ない。めずらしい本を置いても1冊しか売れない。一方で、佐伯泰英は置けば100冊売れる。本屋にできる営業努力なんてほとんどないので近々、都内の小規模書店はすべてなくなってしまうのではないか」(同)。

業界の流通事情も経営に響いた。同店のような小規模書店では、ベストセラーなどの売れ筋は配本の冊数制限で、店頭に置くこともままならない。また、新刊の出版サイクルが早まっていることで、専門店である同店でさえ手に入らないミステリー本もあったという。こうしたさまざまな要因が相まって経営的に追い込まれていったようだ。

閉店前の数日は常連のほか、県外から駆けつけた客も多数いた。「『残念だ』、『これからはどこで買えばいいのか』とたくさんの方がおっしゃっていた。でも、どうにもこうにもならなかった。業界全体で“一人でも多くの若い読者を作る”。方策はこれしかないだろう。厳しいと思うが、今後もどこかの書店で働けたら」と同氏は話している。

(本紙2010/9/9号掲載記事から)
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