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第63回
どうしようもなく自分な…小説「i」
 西加奈子さんの新刊『i』を読んだ(ポプラ社より11月29日配本予定)。
 
 もう文芸書担当ではなくなってしまった私だが、私にとって彼女の小説は、そういう次元の話ではない。発売前の小説をプルーフで読み、早々と大きな声で感想を言うことに対して躊躇う気持ちはある。
 
 しかしこの連載は、その時(=担当T氏に本気の催促メールをもらった時)に最も私の心を動かした、動かしていることについて書くと決めているので、どうか書かせて欲しい。
 
 『i』は、全てを孕んだ小説だった。だから、たまたまそこに浮かび上がったワードをちょちょいとつまんで、「○○がテーマの××小説」なんて括ろうとした日にゃ、新井さんの飛び蹴りが入るだろう! 西加奈子は規格外だと言うておろうに!
 
 『i』を読むうちに「i」の中にすっぽりと入ってしまう。『サラバ!』もそうだった。その人は自分と全く別の人だが、恥ずかしくて転げ回るほど、どうしようもなく自分なのだった。ついにこれまでか、と膝が砕けそうになっていたところに、これだもの。「i」だもの。
 
 私は「i」と先へ進むことにする。もはや恥ずかしさを一回転して、すっぽんぽんで立ち上がり、みんなをびっくりさせてしまうかもしれないが、誰が何と言おうと、自分の決意を恥ずかしいとは思わないんだ。
 
(三省堂書店池袋本店/新井見枝香)
(2016年11月7日更新/ 本紙「新文化」2016年11月3日号掲載)
               
 
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