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第73回
人間は「本のようなもの」
 絵本作家・ヨシタケシンスケさんがPR誌「アスタ」(ポプラ社)で執筆していた「頭の中書店」は、本にまつわる妄想をイラストと言葉で綴る、たった2ページの連載だ。
 
 その最終回のテーマは「本のようなもの」。本は、表紙を見ただけでは、中身のすべてはわからない。人間も、そこにある一人一人のストーリーは、顔を見ただけではわからない。そういうところが「本のよう」だと、作者は妄想しているのである。
 
 人間の体に本の頭が乗った絵はシュールだが、言われてみればなるほどである。
 
 朝の満員電車で、いつも肘をぐーっと突っ張ってイヤイヤをするように体を捩る「イヤイヤおじさん」によく遭遇する。みんな見て見ぬフリをして、じっと耐えている。不快なのはみんな同じ。そんなことをしたってくたびれるだけなのに。
 
 理解ができないことをする人間の顔は、怖いから見たくない。本にばかり向き合ってきた私は、しばしば生身の人間に関わることに戸惑う。
 
 しかし、おじさんが本だとしたら。誰かに優しく頭を撫でられたり、大切な人を護ったりするシーンはあっただろうか。どんな夢があって、どんなつらいことがあって、なぜ今「イヤイヤおじさん」なのか。
 
 人間は「本のようなもの」だという妄想は、私を少し楽にさせてくれる。
 
(三省堂書店/新井見枝香)
(2017年4月10日更新/ 本紙「新文化」2017年4月6日号掲載)
               
 
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