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第1回 アルファポリス
ネットとリンク、ヒット連発
 シリーズ17点で累計100万部の吉野匠『レイン』や50万部の柳内たくみ『ゲート』といった小説は、もともとインターネット上に投稿された作品である。
 
 そうしたネット小説の登録・閲覧プラットフォーム「アルファポリス」を運営し、同サイト上での人気作を書籍化しているのが、(株)アルファポリスだ。取次口座はもっておらず、星雲社を通じて取次へ流通、出版を行っている。サイト「アルファポリス」は月間400万ページビュー(ユニークユーザー数50万)を誇る。
 
 同社は前期3月度決算の売上げが約10億600万円、経常利益が3億円強、今期の見込みは売上14億円、経常4億円と、右肩上がりの成長と高い利益率を達成。日本の出版業界が年々縮小するなか、同社は拡大・拡張を続けるネットとリンクすることで、紙のヒット作を連発している。
 
 広告代理店勤務を経て、ネットベンチャーの起業が盛んだった2000年に同社を創業した梶本雄介社長(写真)に訊いた。
 「弊社の売上げの95%はネット上のコンテンツを書籍化した“紙”からです。電子書籍のアプリや広告など、ネットからの売上げは5%にすぎません」
 
 
 同社の書籍の購入者のうち、実はネットからの読者の割合は5〜20%。つまり、8割以上が書店店頭で初めて作品を知って購入している。
 ネットで人気になる作品は、そもそもひとを惹きつける“匂い”をもっており、ゆえに紙で出すとそれまで存在を知らなかった人たちも興味をもつのだそうだ。
 
梶本雄介社長
 「起業する前に書店を眺めていて、読者の好みとかけ離れた本ばかりが並んでいるような印象がありました。それを象徴するのが吉野匠さんの存在。彼は出版社主催の小説新人賞に投稿していましたが、結果は芳しくなかった。けれど『レイン』をネット上で公開すると、たちまち人気作になりました。
 
 既成の出版社による新人発掘システムではすくいきれない才能でも、面白ければネットの世界では読者がつく。僕らはその才能が世に出るためのお手伝いをしているわけです」
 
 33歳の自衛隊員が主人公の『ゲート』の中心的な読者は、著者の年齢とも近い30〜40代男性、女性向けレーベルであるレジーナブックスやエタニティブックスで刊行される作品は、やはりそれぞれの著者と同じくらいの年齢の20〜50代の女性がコアな読者だ。ジャンル別ランキング機能などを有するサイト「アルファポリス」が、書き手と読者の年齢や性別、趣味嗜好を合致させる仲立ちをし、新たなマーケットを掘り起こした。
 
 「今後は漫画にも力を入れていきたいと思っています。ネット発の大ヒットコミックを誕生させたいですね」。梶本氏の眼差しは、さらに先を見つめている。

(飯田一史・ライター)

(2013年3月7日更新  / 本紙「新文化」2013年2月21日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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