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第4回 ヒナプロジェクト
30万人の作家抱える 「小説家になろう」
 ネット小説の投稿・閲覧プラットフォーム「小説家になろう」は、日次で2000万PV、ユニークユーザー80万人を誇る驚異のサイトであり、作家登録者は30万人を超える。「なろう」を運営するのは潟qナプロジェクト。代表の梅崎祐輔氏が学生だった2004年にサービスを開始、09年に大幅リニューアルし、法人化を果たした。
 
 人気に火がついたのは10年、同サイトに掲載されていた佐島勤「魔法科高校の劣等生」がアスキー・メディアワークスの電撃文庫から刊行され、爆発的なヒット作になってからである。とくれば、ユーザーはライトノベルの読者や作家志望と重なっているかと思いきや「高校生や大学生の利用者は多いですが、作家登録者が書ける日記ページでは、既存のライトノベルの話をしているのをあまり見かけません」とのことだ。
 
 ユーザーの男女比は6対4。ネット小説独自の生態系のなかで日々、膨大な作品が書かれ、読まれている。
 
 投稿・閲覧プラットフォームを立ちあげるのは簡単だが、重要なのは運営力である。たとえば、作品を“自由に”投稿できると言っても、2次創作をはじめとする権利問題、わいせつ表現に関する法規などは無視できない。それらへの対応を、ユーザーとの信頼関係を崩さぬよう迅速に行っていく必要がある。「ネットサービスの提供経験の蓄積がモノを言う世界ですから」、後発の参入者に対する脅威は感じていないという。
 
 
 同社の収益源は、ほとんどが広告収入である。「サイトのユーザーに課金するつもりはありません」。「なろう」はスマートフォン、フィーチャーフォン、PCいずれにも対応し、すべての機能が無料で利用できる。「営利を優先するのではなく、半分ボランティアだと思ってやっています」と冗談めかして語るほどに、同社は徹底したユーザー志向を貫いている。それこそが莫大なアクセス数を生み、その副産物としての広告収入を生んだ。10年以降、右肩上がりの成長を達成しており、「前期の売上げは1億円を越えています」。
 
 コンテンツビジネスと言えば、作品を有料で販売し、ユーザーへの課金で収益をあげるモデルを出版社の人間は考えがちだが、同社の発想はまったく異なる。「投稿作品の紙での書籍化は、我われにとってはメディアミックス先のひとつという認識ですね。ネット上のサービスを展開している会社ですから、版元になるつもりはありません」。
 
「なろう」は、クリエイター発掘の新人賞をゲーム会社や出版社とタイアップして行ってもいるが、今後はアライアンス先の拡大、そしてウェブサービスとしての次の展開を用意しているという。「マンガ化をはじめ、新しい企画のご相談はいつでもお待ちしています」。
 
(飯田一史・ライター)
(2013年5月17日更新  / 本紙「新文化」2013年5月16日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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