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第17回 フロンティアワークス
「文芸書」棚をねらいうち
 アニメやゲーム、ドラマCDの制作やBL小説などを手がけるフロンティアワークスは、昨年夏にネット小説レーベルを立ちあげた。
 
 日々の生活に活力を与える“読むサプリ”をコンセプトに、女性が活躍する女性向けファンタジーを「アリアンローズ」として、メディアファクトリーと共同レーベルというかたちで男性向けの「MFブックス」を創刊した。平積みされると消化率が非常に高く、MFブックスは全シリーズが重版。創刊前には編集スタッフが全国の書店に足繁く通い、想定顧客である30〜40代がどんな棚で何を買うのかを見てまわった。
 
 その結果、文芸棚へ配本されるように、四六判ソフトカバーでの刊行を決めた。「創刊後の実績を見ても、我われの読者は30代を中心に、20代後半から40代までが多く、学生向けのライトノベルやコミックのユーザーとは重なっていません。一般書店の、文芸の棚で売れるんです」と、同社第1事業部課長の辻政英氏は語る。
累計9万部を発行する
「魔導師は平凡を望む」シリーズの第5巻
 
 
 かつてラノベを読んでいた30代、40代も、10代とは感覚の乖離が大きくなり、ラノベ棚から遠ざかる。そんな人たちが「本当はこういうものが読みたい」という想いから同世代向けにネットで小説を書き、それらが書籍化されて文芸棚に収まると「これが欲しかった」と購入する人が、意外なほど多かった。だから書店のネット小説コーナーは日に日に面積を増している。
 
 「うちの編集部員は皆『小説家になろう』(ネット小説投稿サイト)の作品が大好きで、『共感できるもの』『自分たちの感覚でわかるもの』をやっています。
 
 たとえば、私たち自身がまず担当する作品や作家さんのファンですから、本を出すからと言ってネットで作品の続きを更新するのを止めてほしくない。うまくスケジュールを調整いただいて、作家さんとネットでのファン、書籍の読者がそれぞれ納得のいくかたちを目指しています」
 
 
 最近ではネット小説を書籍化する版元も増え、「なろう」のアクセスランキング上位作品は複数の出版社から書籍化のオファーがかかり、少し人気が出ると青田刈りされるようになった。
第1事業部の辻政英課長
 
 「私たちはランキングを気にせず、自分たちのユーザー感覚とレーベルカラーに合った作品にお声がけしています  結果として、ランキング上位作品になることも多いのですが」
 
 編集者の役割のひとつは、作家の才能を見抜き、プロデュースする「目利き」である。ネット小説の書籍化でも、ランキング上位作品があらかた書籍化された今、改めて「目利き」が求められている。
 
 同社で開催した新人賞への応募作品は1500以上。これもアクセス数では判断せず、編集部員が実際に読んで選考している。目利きに必要なものは、そのジャンルへの深い見識と、愛情だろう。
 
 「作家さんからはたびたび『フロンティアの編集者が一番熱心に読んでくれている』と言っていただけています。その点に関してはうちが一番だと、胸を張って言えると思っています」
 
(飯田一史・ライター)
(2014年7月7日更新/ 本紙「新文化」2014年7月3日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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