出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ 出版業界 専門紙 新文化
第1回 「突然ですが、詩人です」

 新文化のウェブをご覧のみなさん、はじめまして、花本武と申します。東京・吉祥寺のブックス・ルーエにて日夜愛しの書籍たちと格闘している、かけだしの書店員です。

 そこそこに野心家なので、目指すは安藤哲也氏のような、本屋の楽しさを多くの人に伝えられる書店員。氏の著作『本屋はサイコー!』(新潮OH!文庫)を読んで、ひどく憧れてしまいました。ミーハーなので、今はお店にいらっしゃいませんが、千駄木の往来堂書店さんにおもわず出向いてしまったほどです。


 それはそれとして、なぜ自分のような敬語もままならぬ若輩者が由緒正しき出版業界紙新文化のウェブに連載を持たせていただくに至ったか。それはまさに若輩者であったが故のことなのです。

 とある出版関係者が集う宴の席で偶然隣合わせた新文化の丸島社長と名刺を交換させていただいた折に、あろうことか
「新文化さんはどのような本をだされているんですか?」
と質問してしまいました。出版社だとおもっていたんですね。思い出すだにイヤな汗が流れる非礼でした。

 その際非礼ついでに自分が非定期的にこしらえている書籍にまつわるフリーペーパーについて話をさせていただきました。そのフリーペーパーは「書籍礼讃」といいます。言わずと知れた谷崎潤一郎「陰翳礼讃」のもじりです。社交性を含めつつも興味を示してくださった丸島さんに、翌日非礼を詫びながら書籍礼讃の原稿を送りつけてみました。

 そんな縁からアレヨとゆう間にこの連載「ルーエからのエール」に至ったというわけです。で、形としては書籍礼讃の出張版とさせていただきました。ありがたいことです。


 突然ですけど、詩ってどうなんですか?

 みなさまは詩に対してどのような印象をお持ちでしょうか。いきなり私は詩人ですと自己紹介されたら、たいていの人は少々困惑するのではないでしょうか。そのあたりを踏まえたうえで私は詩人なのです。

 詩人の定義はよくわかりませんが、職業ではないような気はします。谷川俊太郎の職業は詩人かもしれませんが、レアなケースだとおもいます。ちょこちょこ詩を書いているので私は詩人と名乗るのにやぶさかではありませんが、一抹の恥ずかしさが伴ないます。詩をポエムとするとより恥ずかしさは際立ちます。履歴書に趣味:ポエム、と書くのは確実にはばかられます。でも私はブックス・ルーエのアルバイト面接の際持参した履歴書には趣味:ポエトリー・リーディング(自作詩の朗読)、と書きました。面接官だった店長が困惑したかどうかは謎ですが、生年月日には惹かれるものがあったそうです。私と店長は誕生日が同じ。

 そんなわけで詩集には格別な思い入れがあります。

 詩集という響きは特殊だとおもっています。小説集といった場合とは醸し出されるオーラが違うような気がします。谷川俊太郎が思潮社から出した近作詩集6冊をコンパイルした作品のタイトルはずばり「詩集」でした。

 余談ですが、私の持っている思潮社の谷川俊太郎全集は本人のサイン入りです。そのサインをもらった際、コピー機とホッチキスを駆使して自家製本した花本武詩集を谷川翁に渡したものです。

 思潮社。日本の現代詩を担う孤高の出版社といったイメージがあります。いつかここから詩集を出したいと願っている詩人はけっこういるんじゃないかとおもわれます。かく言う自分も出してくれるのであれば出してほしいと願ってます。これは、たとえば新風舎から自費で出すのとはやっぱり違うとおもうのです。こんな風に書くと新風舎の方や新風舎から詩集を出した人は気分を害されるかもしれません。ごめんなさい。自費出版を一概に否定するつもりではありません。

 そんな思潮社が池袋のリブロに出店していた詩集の専門店「ぽえむ・ぱろうる」がつぶれてしまったのは、とっても悲しいことでした。


 最後に二つ書かせてください。
 1 古川日出男「LOVE」(祥伝社)にて三島由紀夫賞受賞!おめでたい!
 2 「オーメン」(河出文庫)の本体価格は666円!獣の数字だ!

(2006/6/20)

バックナンバーへ

購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お問い合せ
メール送信
リンク

新文化通信社