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第2回 「夏100と云う魔力」

 第2回にして、いきなり〆切りを破ってしまいました。
 まったく頭が上がらないところなのですが、言い訳があるので聞いてください。その言い訳こそが今回のテーマなんです。


 私ことブックス・ルーエ文庫・新書担当:花本。とても忙しかった。常々自分は忙しいって言ってる人は「忙しいフリをしている」ないしは「多忙な自分に酔う」といった状態であると認識いていたのですが、今回その考えを若干修正することにしました。忙しいときは忙しいですよ。

 文庫担当者は夏になると強制的にお祭りの仕掛け人としての使命をも担うことになります。新潮、角川、集英社の文庫の100冊キャンペーンが始るからです。7、8月はこのお祭りに売上げの命運が託されています。いかに盛り上げ、いかにイケイケドンドンな結果を出すか。そのためにまず重要なのは陳列であり販売拡張材料(拡材と略します)の飾り付けです。今年も各社共に気合の入った拡材が届きました。ポスター、垂れ幕、フロアシートに手書き風(あくまで“風”)のポップ。そして必ずもらえるプレゼント企画。各社似たり寄ったりではある中で、今年は集英社の拡材を評価したい。各社のキャラクターを診てみましょう。

 新潮:100%オレンジによるパンダのヨンダ君
 角川:宮崎あおいとカバのディス君
 集英:蒼井優と羽海野チカによるハチ

 ね?

 なにが「ね?」なのかよくわかりませんが、ガチンコ美少女対決、優ちゃんに軍配上がるってことでいかがでしょうか。世の流れ的にも個人的にも優ちゃんに勢いが感じられるんです。ほぼ等身大のパネルは流れ流れてヤフオクに辿りついたりしないかといらぬ心配をしたりします。ポスターは全て角川とバッティングさせて美少女対決感を強調してみました。

 さらにプレゼント企画が集英社は独自路線をいっています。新潮、角川は2冊読んで応募しての入手。集英社はお買い上げいただいたその場、そのレジにておみくじの要領で(実際おみくじにもなっているのですが)ブックマーク(クリップ型の栞)全10種を手づかみしてもらうシステムになっております。なにやら集英社のまわしものめいてきました。


 激しく脱線してしまったようですが、本線がどこにあるのか私自身把握していないのでご容赦ください。


 今年の夏100は特殊な陳列を試みています。出版社の垣根を越え本を分類し、なるべく著者が隣合うようにセクションを設けていきました。メインの台にはとにかく売りたい銘柄を配置し、古典・近代・時代ゾーン、恋愛・女性向けゾーン、エンタメゾーン、外文ゾーンといったニュアンスで展開しました。おもわずもう1冊買っちゃわせられたら本望です。

 そのような陳列をせんがために、3社の荷物が全て揃うのを待ち、一挙に荷を解いて品出しを敢行しました。300点が各平均で20冊近く有り、気が遠くなる作業だろうと覚悟を決めて、ある夏の日、私は26時半に出勤しました。自転車での道行き、パトロール中の巡査に点灯を促されました。真夜中の職場に立ち、深く息を吸い込む。これだけ破天荒な時間から始めるんだから楽勝であるとふみました。6000冊をなめてはいけません。開店時間30分前にしてフロアにはダンボール、結束バンドが散乱。借り置きの本、未整理の棚。カオス。「古事記」の隣に唯川恵。「あのころ」「まるこだった」「罪と罰」。やっぱり気が遠くなりました。


 ポップの効果なんていまさら取り沙汰するようなことではありませんが、夏100においては極めて顕著に発揮されるようです。前任の文庫担当者から、とにかくポップつけたものから売れていくぞと言われ、それは去年実証済みでした。で、出版社が送ってくれた手書き風ポップを林立させる。それはすごく簡単なことです。簡単なだけに私には落とし穴の匂いがプンプンするんです。店としての主張、担当者としての主張のないやり口はよろしくない。思い入れのない本にポップを立てるのは、愛すべき本に対する侮辱になりうるのではないか。本妻(洒落?)を裏切り、色目を使うような行為なのではなかろうか。思い入れの強い本は稚拙でもなるべく手書きでいきたいですね。


 最後に一つ気になった本を紹介させてください。
『広重の暗号 ヒロシゲ・コード 東海道五十三次の謎』坂之王道/著 青春出版社
  あまりに堂々たるトんでもっぷりに少し驚きましょう。次は誰コード?

(2006/7/6)

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