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「8年ぶりプラス」の主役と脇役

出版科学研究所調べの2004年出版販売額は、前年比0.7%増と8年ぶりにプラスになった。これは取次会社の送品額から返品額を引いて算出することを基本とした推計であり、言うまでもなく個々の書店や出版社の現状をそのまま表してはいない。

そのなかであえて注目したいのは書籍の伸長、なかでも文芸書が牽引役になっていることだ。その最大の要因は、「ハリー・ポッター」ではなく店頭に立つ全国の書店員にあったと思う。数年前から、自店発の売れ筋本を作ろうとする書店員を評価する傾向が出てきた。それを良い意味で利用しようとする出版社や取次会社の動きもあり、輪が広がっている。

第2回が進行中で参加者も増えている「本屋大賞」は象徴的な例だ。「あれは『全国の書店員』が選んでいるんじゃない」ときっぱり異を唱える書店員もいるが、じつはそういう人こそ独自の「大賞本」をもっている。これらが、やがてミリオンセラーや数十万部の大ヒットに成長したり、初版で終わるはずの作品が数万部にまで達する。そういう事例が増えているのだ。現実としては書籍も厳しい状況にあるなかで、「ハリー・ポッター」だけが頼りだったとしたら、今回の結果はなかったのではないか。

もちろん、既存の大物作家だけでなく、書店員が個人的に「売りたい」と思うような新しい作家が次々と出てきているのも大きい。店頭で教えてくれる「いまイチオシの作家」は、かなりバラエティに富んできている。

「書店発ベストセラー」という言葉が頻発し、個々の書店員を必要以上に持ち上げることには、その当事者も含めて異論も出てきている。だが、作家と書店員という、本が買い手に渡るまでの行程の両端にいる2者が「主役」になると、たしかに出版市場は盛り上がるのではないか。となると、その間に入る人や企業は、いかに優れた「脇役」を演じられるか、あるいは自ら「主役」に回るか、なのかもしれない。少なくとも、「主役」をさし置いて事を進める企業や事業は、うまくいかないのではないだろうか。

石橋毅史
(2005/1/27)

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