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第6回 熱心だった大学生協の若者たち(2)
 前回の同志社良心館ブック&ショップに続き、立命館生協のリンクスクエアショップを紹介したい。同店も壁面に専門書、中央に一般書、企画、新刊という配置だ。左側の突き当りの壁棚には、最も力を入れていると思われる理工学の専門書。それに対し入口からまっすぐ奥に進むとそこには法経の専門書がある。どちらも品揃えは充実している。
 
 店の前半分に企画スペースがあった。訪店時はマネキ猫の大々的なフェアを開催中。タムシン・ピッケラル著、アストリッド・ハリソン写真「世界で一番美しい猫の図鑑」(エクスナレッジ)、フィオナ・サンクイスト メル・サンクイスト著「世界の美しい野生ネコ」(同)、南幅俊輔著「ワル猫だもの」(マガジン・マガジン)といった商品がお洒落に並べられ、前田氏によると「好評」とのこと。理学書棚の前では人工知能と機械学習のクロス企画。人工知能コーナーはどの店にもあるが、機械学習を組み込んで一味添えた。うまい! 専門雑誌の平台では理工書の読みもののコーナーもある。
 
 新刊の配置も独創的である。専門ジャンルも一般ジャンルも、各棚のゴールデンラインに新刊棚を1〜2段設け、極力面出し陳列にして展開している点が独創的である。たとえば、壁棚に専門書が「棚差し+面出し」でズラーっと並ぶシーンを思い浮かべたい。その目の高さにある2段の新刊が、整然ときれいに流れていく姿は壮観といってよい。
立命館生協リンクスクエアショップ
 
 大学生協の書店は、ジャンル別に大きめの独立した新刊棚をつくり、そこに新刊をまとめる例が多い。立命館生協リンクスクエアショップの試みは、新刊を独立した新刊棚でなく、ジャンル内の棚に分散配置するものといえる。
 
 雑誌への対応も注目される。最も奥にある雑誌売場は大きなスペースをとる。エンドは女性誌で埋められるが、通常棚ではアニメ・バトル系が目立つ一方、専門誌にも目配りがいい。「Newton」(ニュートン・プレス)、「数学セミナー」(日本評論社)、「トランジスタ技術」(CQ出版)、「近代建築」(近代建築社)などが収まっている。このバランスがいい。
 が、様々な観点から繰り出される創意工夫が同店にはある。注目したいのが、大分類表示はメイン通路から必ず見えること。他愛ないと思われるかもしれないが、それができていない一般書店は少なくない。
 
 さらに面出しが自然に感じるよう補助台がつくのはよくある風景だが、平積みの2列目の本を、補助台を使って立てているのには驚愕した。デヴィッド・グレーバー著『負債論』(以文社)などは1冊ずつ2列展示となっていた。売るべきと判断した単品を売り伸ばす発想がベースにあると思われた。
 
 基本が確立し攻めの提案もできている。小売店としての観点からみても、こういうしっかりした売場づくりに挑む書店は、一般書店でもそう多くない。店長の岩岡創氏は書籍売場についてこうコメントしている。
 
 「お店の季節感・変化を演出する点で新刊・テーマ企画が大きな力を発揮しています。授業の合間はもちろん、定期的に立ち寄る方も多く、お店に変化があって『今日はなにかあるかな』と期待していただけるのが目標です。来てもらって楽しいお店を目指して、担当者を中心に日々工夫をしながら頑張っています」
 
 書店道場では、基本の徹底と提案の大切さについて多くの時間を割いている。「基本」では分類と陳列が、その店の実力を恐ろしいまでに反映され、売上げに直結している。「提案」では決定的な強みを生かした対応こそがお客さまの心をとらえている。この2点に限らず大学生協書店は、基本と提案の両面、さらにそれらを支えるマネジメントと経営の努力をつづけている。一般書店がその店づくりや姿勢に学ぶものは少なくない。
 
 最後に書店道場大学生協版への参加者から寄せられた感想を紹介しておきたい(氏名50音順)。
 
 
◎稲葉紗季氏(早稲田大学生協戸山店)
新しい店に異動になったばかりで不安もありましたが、どの書店員も一歩踏み出して魅力的な店づくりができることがわかり、少し心の荷が軽くなりました。
書店道場に参加してどんな仕事に対しても基本が最も重要だと再認識しました。異動というタイミングもありましたので、新たな気持ちでたくさんのことを吸収していきたいです。普段、勉強する機会の少ないマネジメントや経営面についても、非常に参考になりました。
 
◎宇津山琢磨氏(同志社生協良心館ブック&ショップ)
全3回の書店道場を通じ、基本の重要性を痛感するとともに、できていない部分が見えた研修でした。研修後に改めてお店を見ると、立地条件・お店の規模、自店舗のパートさんの力量の高さなど、自分が非常に恵まれた環境にいることを強く感じました。
一方で、改善点も見えました。マネジメントの部分も大変勉強になりました。今回の研修で学んだことをひとつでも多くお店に還元できるように努めていきたいと思います。
 
◎太田乙生氏(北大生協クラーク店、北海道事業連合)
書店道場の講習会では、具体例として東大駒場店の改善についての説明を聞いたが、自店舗にも当てはまる事例も多く他人事ではない内容だった。お店のなかだけではなく、外側からの改善は自店舗もまだまだできていないので課題意識を持って取り組みたい。また、これから事業連合担当者として、全道の店舗を支援するうえで大変ヒントになる講習会だった。“コンサルタント”の基本にも触れることができた。いただいた資料もためになるものだったので、もう一度読んで身につけたい。
 
◎相楽あけみ氏(東大生協駒場書籍部《当時》)
書店道場の講義を聞いて、今まで不安に思っていた力不足の面やあいまいになっていた書籍全般についての項目が明確化されたと思います。マネジメントについても触れていただき、刺激になりました。今回の講義を機に新たなお店で一つひとつ確認してみたいです。
 
◎中村裕美氏(岐阜大学生協医学部店)
店舗の棚づくりについては、改めて様々なルールがあることを確認できた。まめに商品を入れ替えて常に新鮮な棚にするなど、棚の陳列についても少し整理する必要があると感じた。店舗のスペースに限りはあるが必要に応じて多面展示などの攻めの陳列方法を用い、目を引く陳列を試みたい。アルバイトやパート職員への接し方なども詳しく教えていただいた。今回の「書店道場」は書籍担当者としてスキルアップしていく上で大変実りのあるものになった。
 
◎藤井伸行氏(広島大学生協)
青田恵一氏の「書店塾」を通して、当店でも参考になる、というよりもしなければならない課題として、様々のものをつかむことができた。まだまだ基本ができていないので、まずは基本の徹底から取り組みたい。売上を劇的に上げる一番の方法は、店の外への対策により入店者を増やすこと。内部的には店内案内図の作成。「学生が本を読まない」傾向もあり、大学生協の書籍部の売上は厳しいが、そのような状況下「競合店対策」の話は印象的だった。
 
◎前田郁氏(立命館生協リンクスクエアショップ)
「良い店」を作るためにこの2年間研修を受けてきました。これからの目標として、関西No.1の店舗になれるような心構えで店づくりをしていきたいです。店のパートさんたちも強い意気込みを持ってくれています。こだわりある独自企画に加え、書店道場の講義で何度も強調されていたように、「提案」する書店として、良書をプッシュしていきます。育成プロジェクトで得た経験を、より多くの店舗に還元していきたいと思います。
 
 
 なお書店道場の次回第5クールは、会場が改装に入る関係で2018年2月と3月になる。具体的には2月6日(火)、20日(同)、3月6日(同)(すべて14時〜18時)の3日間。詳細は来月に発表する予定である。
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2017年10月23日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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