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第9回 書店道場は「“こどもの本”総選挙」を応援します
 書店道場は現在、4月からの第6クールを申し込み受付中である。3日間のうち初日と2日目はともに千代田プラットフォーム、3日目は書協(一般社団法人日本書籍出版協会)様をお借りする。奮ってご参加いただきたい。詳細はこちらのチラシをご参照ください
 なお、第6クールは出版社様の受講枠も設けている(受講料は書店様と同じお一人様税込5万円)。ご希望の方は社名、部署、参加者名などを記し、以下のアドレスまでお申し込みください。メール=k.aota●nifty.com(●=@)
 
 
 さて、今回はポプラ社が総力で取り組む「“こどもの本”総選挙」についてである。
 
 みんなのおもしろいが1番おもしろい!
 このキャッチフレーズのもと、ポプラ社(長谷川均代表取締役)が「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」というビッグイベントを企画、推進している(詳しくはこちら)。
 
 全国の小学生が「1番好きな本」を選び、投票で「今のこどもたちに一番支持される本」のベスト10を決める壮大な読書推進活動である。
 
 対象の本は、小学生が選ぶ以上、おのずと児童書、絵本が中心だろう。
 
 来月2月16日の投票締切りを目指し、すでに膨大な投票がなされている。数百人にものぼる小学生が丸ごと参加するという小学校も少なくない。
 
 当企画の趣旨について、主催者であるポプラ社「こどもの本総選挙事務局」の山科博司氏はこう語る。
 
「“こどもの本”総選挙は、当社の『70周年記念事業としてなにかやろう』という声から出発しました。営業、編集、経理など全社的チームの討議中に出された『子どもの本屋大賞はなぜないのか』という問題提起を踏まえ、若手の女性営業マンが発案、他のメンバーが賛同して生まれました。読書の授業では読んでも、自分の時間では読まない『ドッジボール男子』が増えていると聞きます。でも面白い本は必ずあるはずです。チームメンバーは皆、小学生にそういう本と素敵な出会いをして欲しいと願っています。書店様にもっと足を運んでほしいという思いもまた強いです。」
「“こどもの本”総選挙」ロゴマーク
 
 この企画、小学生が主体的に本を選び、読み、投票するのが眼目である。読書を必ずしも好まない小学生には、いい本をみずから選んで投票するという行動を促すことになる。これを機に読書好きの若者に育って欲しい――そんな願いも込められた今回の試みは貴重だと思う。
 
 小学生といっても、出版業界の大事なお客さまなのである。
 
 未来の読者を育てられるなら、書店もこのイベントに積極的にかかわりたい。できることはいろいろ考えられる。
 
●総選挙用の(B3大)ポスターを店の目立つ場所と児童書売場に掲示し、応募用のハガキを置く。
●小学生のお子さまを持つお得意さまに呼びかける
●自店がお薦めしたい本を集め、ブックフェアを開催するか特設棚をつくる。
●ベスト10の発表後は、児童書売場とともに店頭においても、多面陳列やワゴン販売、ブックフェア、特設棚、ひと声運動などで大拡販キャンペーンを行う。
 
 全般的な対応として、なにをどうしたらよいかは、ポプラ社にお問い合わせていただきたい。
 
 小学生のときに読んだ本は、生涯、記憶に残るものである。そういう体験はなにものにも替えがたい。私自身、小学生のころは本にまったくなじみがなかった。自宅に本はほとんどなかった。本を読む人間はひとりもいなかったからだ。小学生時代、私が読んだ本は、宿題を除けば、父親が買ってきた児童書の偉人伝1冊だけだった。
 
 学校の図書館に入ったこともなく、高校を卒業するまで、学校に図書館があることさえ知らなかった。本を読むことへの関心はほぼなかったといってよい。書店にも高校卒業まで、教科書や参考書を求める以外で入ったことがない。書店で働くようになり、小学校時代から児童書版とはいえ、世界文学全集などに親しんだ話を耳にして、何度うらやましいと思ったかしれない。
 
 当時、“こどもの本”総選挙のような企画があれば、本に縁がなかった私でも、もっと本や読書に親しみ、その延長で人生が変わっていたかもしれない。そう考えれば、今回の企画は他人事ではなく、現代の小学生がこれから歩む道を探るきっかけになるのではとさえ思う。
 
 この総選挙は、まさに小学生による本屋大賞のような企画である。売行きも大いに期待できよう。アンバサダーに、芸人で芥川賞作家の又吉直樹氏が就いたことも追い風となる。
 
 この企画は同社の創業の精神が基盤になっている。昨年6月1日、刊行された社史『ポプラ社創業七〇年の歩み』(ポプラ社)の13ページには、久保田忠夫氏とともに、創業者である田中治夫氏の創業への意欲が表明されている。
 
「私たちは、昭和一ケタ育ちで、講談社文化の洗礼を受けて成長しました。したがって、新聞広告に出る講談社の雑誌や単行本が読みたくて、夢にみるほどでした。その欲求不満が、戦後しゃにむに出版につっ走ったことにつながります。自分たちと同じように、本を読みたい読者がワンサといるにちがいないと思い、食える食えないかなんてことは考えずに、出版を始めればなんとかなると、ゼロからの出発を無謀にも断行したんです。」
 
 総選挙事務局の山科氏はこの箇所を示しつつ、「子どもがみずから読みたい本をつくるというのがポプラ社創業の根幹にあります。今回の企画はその精神に沿ったものです」と話す。であれば、「いまの子どもたちがなにを読みたいのか、投票の結果がどうなるのかを知りたい」のももっともといえよう。
 
 創業の精神は現在に受け継がれている。ポプラ社取締役会長の奥村傳氏は社史「あとがき」にこう綴ってもいる。
 
 活字を読み出し、読書が好きになるにはもってこいの本をまず私たちはどんどん提供して、本を読むことをたのしいと感じ、好きになってもらう。そうやって読書のたのしさを伝えていければ、本の世界に自由に入っていく子どもたちはきっと増えていくでしょう(308頁〜309頁)。
 
 社史刊行は企画着想の前だが、“こどもの本”総選挙を期待していたともとれる。
 
 ポプラ社が世に問うこの総選挙の反響は大きい。投票総数1万人を想定していたが、10万人を超える勢いで、場合によりさらに増えることもあり得るという。
 
 投票の商品はあくまで単品単位であり、シリーズ名やキャラクター名は対象にならない。つまりポプラ社の代表的なキャラクター「かいけつゾロリ」ではカウントされず、それを避けるには、たとえば「かいけつゾロリのドラゴンたいじ」というように、1冊の書名で投票しなくてはならない。 そうなると、ポプラ社の本は悪くするとベスト10に1冊も入らない恐れもある。この点から本企画は、同社の利益だけでなく、出版業界全体、いや社会的な観点に立っていることがわかる。同社の純粋な思いと覚悟が伝わってきた。
 
 その思いを知るにつれ、書店道場は「“こどもの本”総選挙」を心から応援したい。書店も出版業界も我が事として、いまからできることに挑戦しようではないか。
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2018年1月26日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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