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第11回 12時間では伝えきれなかったこと(2)
 書店道場の第5クールを終え、現在第6クールを募集中である(詳しくはこちら)。今クールは3日目が書協(日本書籍出版協会)様をお借りすることもあり、出版社様の受講も可能となっている。書店の売上げはどうしたら上がるのか――その全体像を知る機会はそう多くない。奮ってご参加いただきたいと思う(お申込みやご質問は メール=k.aota●nifty.com(●=@) までお願い致します)。
 
 
 さて今回も前回につづき、時間が足りず講義で伝えられなかったことを申し述べたい。
 
1. 分類と陳列
 
〈小さいノイズをなくす〉
 整然とした棚に、たとえ1冊でも、分類上おかしいものがあると、それはノイズになってしまう。それをなくしスッキリ感が醸成できると、読者の信頼感が限りなく高まる。これが固定ファンの拡大につながるのは間違いない。目が回るほど忙しくても、なんとか棚を見つめる時間を取ってノイズをなくしたい。
 
〈陳列のポイント〉
 本は棚に入れちゃえばいい、というものではない。棚に入れるのは、手に取ってもらうため。であるならば、本を取りやすくしないといけない。そのためにはやはり、基本と応用が大切になる。陳列の基本を守りつつ、攻めの陳列をどう創るかがポイントになろう。
 
〈陳列は「文化」〉
 以前、青山ブックセンターの方に聞いたことがある。棚差し中心の書店をみて違和感があるか、と。答は「ある」だった。そうなのかとびっくりした。陳列のあり方そのものが「文化」であり、店により売場によって異なるのは当然のことでもある。つまりお客さまが取りにくくならない限り、「陳列はなんでもあり」だ。攻めの陳列は、伝えたい思い≠ウえあれば、なにをどうしてもいいのではないかと思う。
 
〈分類と陳列の位置付け〉
 分類は売場MDの入口、陳列は売場MDの出口になる。出口で作業していると、入口の分類が変わることがある。
 10年間、店長を務めたある店のブックフェアで、一番反響が大きかったのは「希望の医療」という医療問題に関するものだった。棚入れしていると、神谷美恵子さんなどの女性著者が多いことに気づき、女性著者棚を1本つくった。「分類から陳列」「陳列から分類」へと流れを変えてみることで、新たなテーマを見出せるかもしれない。
 
〈目的買いと衝動買い――平積み商品の棚差しについて〉
 平積み分は棚に差すべきだろうか?
 購入には「衝動買い」と「目的買い」がある。衝動買いは平台や面陳列の商品から探し、目的買いは棚から探すものが多い。
 書店の商品を一般書と専門書に分けると、どちらかといえば一般書は衝動買い、専門書は目的買いになる。したがって、専門ジャンルの平積みした本は、原則、棚にも入れないといけない。一般ジャンルも目的性が高いテーマや著者のものは棚に入れるべきである。
 とはいえ、棚がきつくては差すことができない。そんな時は、意味のないダブリ陳列分を外したり、他の段と調整したり、次に棚から外す商品を意識しておく。意識付けをするだけで、その時の作業が捗る。
 
2. ノウハウについて
 
〈小売業は立地産業〉
 「小売業は立地が9割」という。都内の銀座、新宿、渋谷、原宿などの繁華街では店がどんどん変わっていく。立地が9割ならこれらの場所で撤退する理由はないはずだが、店の入替えは激しく、頻繁に起こっている。
 それは立地以外の条件、とりわけ店づくりが売上げを左右する大きな要因だからである。小売店のマーケティングといっていい。ここをどこまで極めるか、それが勝ち残りの条件となる。つまりマーケティングに基づいた店づくりをきちんと展開すれば、売上げは上がっていくといえよう。
 
〈いい店と売上の上がる店は異なる〉
 いい店とはMDの一部である品揃えを指すことが多いのに対し、売上げの上がる店は、ターゲットニーズを踏まえ、MD、販促、サービス、接客、ハードなどマーケティング全般に、バランスよく対応している。この違いは大きい。
 
〈仕事を面白くするには〉
 売場を見れば、仕事を面白く遂行しているかどうかがすぐわかる。なぜなら、小売りの仕事の魅力は総力で創意工夫することだからである。創意工夫が多い売場では、おのずと仕事が面白いと感じられる。これが足りなければ、そうはなりにくい。
 
3. 店長の仕事
 
〈売上げを上げる要因〉
 一人ひとりの意欲、決意、思いだけが、売上げを上げつづける源泉になる。逆にいうなら、売上を上げつづけるのは店の力だけではなく、人の力と意志であると考えられる。なぜなら、人の思いこそが伝えられる確実なものであるからだ。店長の仕事は、それを最大化するところにある。
 
〈まず売上げを1%上げよう〉
 1%は馬鹿にならない。売上げ1%増は利益を10%くらい増やす、または損失を10%ほど減らすと考えるべきである。そこから2%、3%と徐々に上げていけるよう努めたい。まずは売上げを1%上げよう。
 
〈店長の役割とは〉
 店長の役割は「売場力」と「店舗力」をあげることである。強い売場力があってはじめて強い店舗力ができ、強い店舗力があってはじめて強いチェーン力ができる。店長は3つのうち売場力と店舗力を強め、売上げを上げ、チェーン力の基盤とすることが仕事といえる。店長には、お客さまに感激していただき、それを実現する人を育成することで、目標を達成する役割がある。
 
〈主役と脇役〉
 店長という主役は、すべてのスタッフを主人公にするために、脇役の役割を果たすのが仕事である。
 
〈仕事の本質〉
 仕事の本質を複雑に考えすぎない。生き残り、勝ち残るために重要なことはふたつ。第1は、お客さまを大事にすること。そして、顧客と同様に、あるいはそれ以上に従業員を大切にすること。
 
〈総力をあげる〉
 高度成長時代は総力をあげれば業績は伸ばせた。
 総力をあげることは必要にして充分な条件だった。
 しかし、現在は総力をあげるのは最低条件である。
 努力してなんとかなるなら努力したほうがいい。
 最低限、総力をあげたい。
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2018年3月20日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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