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第12回 「これらの問題、解けますか?」
 書店道場は現在第6クールを実施中である。このあとの第7、8クールは、ある書店チェーン店の特別版として行う予定。そのため通常講座となる第9クールは、9月以降になる見通しである。
 
 
 さて今回は、現在まで募集チラシに載せた「問題」を解説する。一部前のコラムにも掲載したが、改めて全問を投げかけたい。書店道場ではこれらを含み、10問以上の設問を冒頭で出し答を考えていただいている。この答がわからないと、上がる売上げも上がらない。だが、答を知っていれば、上がらない売上げも上げられるようになるかもしれない。以下に、答ではないが、問題の解説を載せるので、ぜひ頭をひねってみていただきたい。
 
1. 商品構成の変更を考える問題(1)
 
第1問
〈100坪書店(%の数字は文庫の年間前年比)〉
 @一般文庫(棚10本)110%
 Aラノベ文庫(棚2本)90%
 B海外・時代・雑学など(棚8本)100%
 
〈問題〉文庫@ABのどれを広げどこを縮めれば売上げは伸びるでしょうか?
 
 売上げを思い切って上げたいとき、小売店として最も正統的なやり方は、商品構成の変更である。ということを前提に、この問題をどう考えるか。
 
 増やすべきは、伸びている一般文庫か、ラノベ文庫か、前年を維持している海外・時代・雑学文庫などか。逆に減らすのは何か。一般的な考え方に沿い、伸びているところを増やすなら、落ちている部分を減らすことになるのか。足りないところを拡大するのなら、多い箇所を減らすことになる。
 と考えていくと、どちらも正しく思えるが、仮説を立ててもう一度整理してみよう。
 
(1)スペースからみると、一般文庫は充実しているため固定客がついている。したがって、ここは点数を減らしても売上げは落ちない。ラノベ文庫はアイテム数が少ないので固定ファンはつきようもない。であれば、一般文庫を減らしラノベ文庫を拡大するのが正しいとみるべきか。
(2)そうはいっても、伸びている分野を減らすのは本当に妥当なのか。前年比がプラスの一般文庫を増やして、マイナスのラノベを減らしたほうがいい気もする。
(3)海外・時代・雑学などは8本ある。ここは前年比100%だからそのままと考えていたが、これも果たしてどうか。
 
 この問題で大事なポイントは、確信を持って事に当たることである。たまたま答が当たっても、それだけではあまり意味がない。確信がないと上司にもスタッフにも理解されないし実現もできない。選択肢は少ないが、間違えると致命傷にもなりかねない。少ない選択肢からどういう考え方で決めるか、それが問われる。
 
2. 商品構成の変更を考える問題(2)
 
第2問
 ある地方大都市の都心型300坪書店。動きのいいビジネス、理工、人文など固めのジャンルを拡大し成功した。その流れで文庫も、ビジネス・カルチャー系と中堅・小出版社の文庫を前面に展開、次に大手出版社の文庫を配した。出会いも演出したかった。この結果、文庫の売上げはどうなったか?
 
 
 この問題はわかりやすい。
 店舗全体で動きがよかったビジネス、理工、人文などを拡大した。その成功を踏まえ後日、文庫売場でも同様の対応を行った。その結果、売上げは上がったか下がったか、あるいは変わらなかったか。大手出版社の文庫を少し後ろに下げたことがどう影響するか、しないか。影響したとしても、中小出版社の文庫を前面展開、かつ創意工夫することで、その影響を消せないか。もしくはさらに売上げアップできないかという辺りが焦点になろう。
 
3. お客さまの入り具合から、売上げを推測できるかどうかを考える問題
 
第3問
 平日の午後6時30分、東京・山手線のある駅近くにある100坪の書店に入った。店内のお客さまを数えたところ雑誌売場に30人、書籍売場に20人いた。この店の売上げはいくらと考えられますか?
 
 
 店舗にはおのずと、お客さまの入りが多い店と少ない店がある。多い店の売上げはやはり多く、少ない店の売上げは少ない。ここまでは誰でもわかる。ではお客さまの入り具合から、売上げを推測することはできないだろうか。当然ながら店舗でも混雑具合は時間により異なる。いや1分違うだけで半減することもある。ここをどう判断するか。
 
4. 競合店対策を考える問題
 
第4問
 図の書店はある地方都市の都心の1、2階100坪の総合書店である(図参照)。雑誌、文芸・人文・コミックなどに力を入れていたが、すぐ隣に500坪の大型書店が出店。以前からあった100坪の店はある方法で、売上げを落とすどころか、むしろ売上げを伸ばした。その方法とは右のうちどれか。
 @競合店の出店前に改装し、特定のジャンルを激増させて特化型とした
 A競合店の出店と同じ日に改装オープンし、あるジャンルを店の半分以上に拡大し専門店とした
 B競合店の出店後に改装し、影響をみた上でジャンル構成を大幅に入れ替えた
 
 
 書店は競合店、とりわけ大型店が出てきても、本格的な対策をそうはとらない。他の小売店のように、一番店と二番店では役割がちがうとか、差別化せねばとかいわれても、手持ちのカードがふんだんにあるわけでもない。だからこれまで通りの総合書店で営業し続けてしまう。専門店ではリスクが大きく、特化型といってもなにをどうすればいいのか。そう思う書店も少なくない。
 
 改装するにしてもそのオープン日をいつに設定するべきか。競合店が出る前か、同時か、後か。前だと競合店にセールスポイントを盗まれるかもしれない。後だと敵の出方を見極めて、有効策を見出せるかもしれないが、それまでに自店のお客さまが離れていかないか。すなわちタイミング的に遅くはならないか。同時の場合、正面激突に勝算は持てるのか。こう考えると悩みは尽きない。
 
 いずれにしてもプラス面とマイナス面がある。つまりはある程度の見通しをつけながら、「まずはやってみる」しかない。書店の仕事は「やってみないとわからない」事柄の積み重ねであり、それこそが経験則となる。店舗は、こうした経験から得られた法則を武器にできる戦場なのである。
 
 これらの答を、実践に照らして一度考えいただきたいと思う。なお、これらの答は書店道場で発表していく。
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2018年4月20日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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