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第15回 広場型ブックセンターの誕生
     〜TSUTAYA春日井店(いまじん白揚春日井店)(1)
 車を降りて思わず立ち止まった。
 
 その書店、いまじん白揚春日井店(TSUTAYA春日井店)は、外装が格子戸模様の木(もく)タッチで、和風かつ瀟洒な雰囲気を醸し出していた。丸文字で「いまじん白揚」、つづいてゴシック体で「本」、中央玄関上にはアルファベッドで「TSUTAYA」、少し離れて「STARBUCKS」とあり、業態が一目でわかった。
 
 店内に一歩踏み込むと、ことのほか高い吹抜けが広い空間を形づくっており息をのむ。
 
 入口のすぐそばには巨大なキャンペーンゾーン。大きめの植木と大木の根っこで飾られた、ベストセラー用とふたつのイベント用テーブル、計3つがつらなっている。入口ゾーンの最奥は親子で楽しく遊べるキッズスペース。そして右手にはスターバックス。お客さまが読書に邁進中である。
TSUTAYA春日井店
 
 店内各所で、空飛ぶ円盤のミニ版ともいうべき円仕様の照明が輝かしい。と思えば、1階の中央地帯を縦断する形で天井近くに、洋書のコピーが貼り巡らされ、物語風の雰囲気を作り出す。店の広場が世界に通じていくというイメージが感じられる。
 
 誘い込まれるエントランス、読書ごころが刺激される多彩な提案、奥に走る洋書の壁紙。これぞ誘惑の導入シンフォニー。襲ってくる知的な酩酊ムードに、しばし酔ってしまう――。
 
 書店道場の第5クールにいまじん白揚本部の石川真理氏にご参加いただいた折り、春日井店の改装のことをお聞きし後日訪れた。フロアは1階(430坪)と2階(380坪)で全810坪。各業種の規模は、本424坪。カフェ61坪、文具・雑貨85坪、CD・DVD36坪、ゲーム25坪。
 
 1階にはキッズスペースとコミュニティスペースもある。
 
 店内を一巡すると、各所で卓抜な売場づくりに遭遇した。1階では雑誌と児童書、生活実用書、2階では文芸書のエッセイ、ビジネス書の自己啓発、人文書、コミックなどである。これらはネット書店や電子書籍への対策を含め、探しやすい売場づくりを志向する書店にとり、指標となりうる棚づくりといっていい。
 
 それでは注目ジャンルをフロア別にみていこう。
 
1. 1階フロア
 
 いまじん白揚春日井店の1階は、ベストセラーの多面展示からはじまる。それはフェアスペースと合わせたキャンペーンゾーンのなかにあった。多面展開のなかに、麻宮ゆり子著『碧と花電車の街』(双葉社)を発見。ノスタルジーをかきたてられる昭和30年代、名古屋市の代表的な繁華街、大須を舞台に、映画監督を目指す少女が成長していく心打つ物語である。同店に宛てた著者の「大須の『怪人』や『女剣士』が出てきます」「人情味あふれる大須の街が好き」というコメントに思いがこもる。
 
 企画はスターバックス開店記念として「コーヒーが冷めないうちに」フェア。田口護著『田口護の珈琲大全』(NHK出版)、旦部幸博著『コーヒーの科学』(ブルーバックス)、山本ゆり著『syunkon日記 スターバックスで普通のコーヒーを頼む人を尊敬する件』(扶桑社)、「珈琲時間」(大誠社)バックナンバーなどの書籍と雑誌で展開中。
 
雑誌売場
 
 最初はボリューム満点の雑誌売場。見晴らしを確保するため、最初の棚こそ1500oと低いものの、次の棚からは、フルカバー陳列棚を上に乗せて2000oと高くなる。平積み2列、棚差し1段、面見せ4面にフルカバー陳列1面という構えである。
 
 順序は前から女性誌、音楽・映画誌、総合誌、コミック誌、男性誌、旅行誌(背中合わせに書籍の地図・ガイド棚あり)という流れ。ふたつ目の棚のエンドなど3カ所にある、サイネージ看板が目立つ。同店では商品、企画、イベント、プロモーションなどの画像・動画情報を、30秒単位で発信している。
 
 もともと同店の雑誌売場の水準は高かったが、大規模なスペースを確保することで、王道をいく風格がにじみ出ている。
 
児童書売場
 
 次は児童書。キッズスペースと接する売場。ブックフェア棚には、大人絵本、おすすめ絵本、改装にかかわった戸田デザインの関係本、しかけ絵本などのキャンペーン棚がある。これが同店の特長のひとつであるが、キャンペーンスペースから取りかかるジャンルが少なくない。
 
 児童書の売場でとりわけ優れた棚はふたつある。
 
 ひとつは、かるた・百人一首からおりがみ、こわいはなし、うらない、なぞなぞ、あそび絵本、さがし絵本に至る棚である。1本1テーマのもと、各キャラクターがよく交通整理されている。必要なものが必要なだけ必要に応じて、つり合いよく揃えられているのである。
 
 もうひとつがトーマス、アンパンマン、ゾロリ、ディズニー、キャラクター(ルパンレンジャー、ポケモン、ドラえもん、仮面ライダー、スターウォーズなどで構成)と続くキャラクターの棚である。
 
 整然としてバランスが美しい。どの棚も、棚上の小分類から、それを構成する棚割り細分類への道筋が、わかりやすくつくられている。マクロとミクロの兼ね合いがよいのである。
 
 絵本棚では可愛らしい屋根が乗った、小さいおうちのような特製什器が微笑ましい。店舗のなかに家庭があるというコンセプトのように見受けられた。家庭もまた広場なのであった。棚4段のうち上側3段が面見せ陳列の提案型絵本棚という点も注目される。
 
 エンドには、かこさとしさんの特設コーナーが設置された。「たくさんの笑顔をありがとうございました」という店のメッセージが掲げられ、そこに『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)、『地下鉄のできるまで』(同)、『過去六年間を顧みて』(偕成社)をはじめとする作品が展示されている。
 
 エレガントなイベント台では、かがくいひろしさんの『だるまさん』シリーズ「が・の・と」フェア(ブロンズ新社)。なお、同売場では知育玩具を本の間に置き、併売することで融合陳列に挑戦している。
 
生活実用書(婦人実用書)売場
 
 マクロとミクロに配慮したバランスがいい棚づくりは生活実用書でも生きている。お洒落本はファッション、ヘアメイク、美容、ダイエット、実用書おすすめと流れる。
 
 この棚でも面見せ棚が確保され、たとえばファッションでは、滝沢カレン著『地球はココです。私はコレです。』(光文社)、光野桃著『白いシャツは、白髪になるまで待って』(幻冬舎)、吉村ひかる著『女は服装が9割』(毎日新聞出版)、美容では石部美樹著、石垣英俊・高橋なぎ監修『新しいピラティスの教科書』(池田書店)、ストレッチ専門スタジオ・SSS監修『憧れのY字バランス』(主婦の友社)、和久井拓著『読むボディメーキング』(光文社)などが拡販されていた。
 
 料理本棚も安定している。新刊、料理の基本、おつまみ、お弁当/つくりおき、健康レシピ、各国料理ときて、専門料理、珈琲/ワイン、料理エッセイ、お菓子づくり、パンづくり、料理研究家、フェアと続く。ほとんどが1本1テーマ。緻密に構築された体系≠感じさせる棚といってよい。
 
 こちらも面見せでのアピールが図られる。料理研究家では、藤井恵氏の『からだが喜ぶ!藤井恵の豆腐レシピ』(世界文化社)、『藤井恵とっておき晩酌レシピ』(同)、『藤井恵さんの体にいいごはん献立』(学研プラス)などの商品に力点が置かれ、料理エッセイでは、高山なおみ『たべもの九十九』(平凡社)、土井善晴『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)、中川たま『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(日本文芸社)が表紙を見せる。
 
 均衡がとれた棚づくりは、ソーイング、小物づくり、刺繍、パッチワーク/キルト、編みものと続く棚においても同様であった。
 
(次回につづく)
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2018年7月23日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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