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第16回 広場型ブックセンターの誕生
     〜TSUTAYA春日井店(いまじん白揚春日井店)(2)
 今年最後の書店道場、第9クールが10月からはじまる。
 
 これまで8回のクールで80人以上の方にご参加いただいた。受講していただいた一人ひとりに心から感謝申し上げたい。
 
 第9クールは10月2日(火)、同17日(水)、11月6日(火)の3日間、講座は毎回14時から18時予定で実施される(詳細はこちら。8月20日時点で、10人定員に対しすでに7人の方の参加が決定している)。3日目は小学館様の会議室をお借りする。今回、小学館様のご好意で出版社様の受講も可能となった。書店でどうしたら売上は上がるのか? そのヒントと本質をつかみたいという出版社の方々も、奮ってご参加いただきたい。
 
 さて、今回はTSUTAYA春日井店(いまじん白揚春日井店)レポートの第2回である。
 
2. 2階フロア
 
 2階では、文芸書と人文書、ビジネス書、コミックの各売場がとくに傑出していた。
 
文芸書売場
 
 まずは文芸書。なかでもエッセイ棚は溌剌としている。あまり見かけないサプライの棚づくりがいくつも存在するのである。女性エッセイ棚はカフカ、SNS発からはじまり、浅見帆帆子、有川真由美、DJあおい、はあちゅうなど主要な著者を集めたあとに、一般的な著者が50音順で並べられている。つづく恋愛エッセイ棚もANNA、大泉りか、おおたわ史絵というように、著者名のア行から甘やかにはじまる。
 
 海外エッセイ棚も目を引く。エリカ、インポートライフスタイル、ディズニープリンセスという著者+テーマによる配置は啓発的といってよく、軽い酩酊感すら覚えた。
 
 ニューヨークで企画開発したレッグウエアを販売しているエリカさんの棚には、『ニューヨークが教えてくれた「誰からも大切にされる」31のヒント』(光文社)、『ニューヨークの美しい人をつくる「時間の使い方」』(大和書房)、『ニューヨークの女性の「自分を信じて輝く」方法』(同)などなどが収まる。
 
 インポートライフスタイル棚には、弓・シャロー著『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』(扶桑社)、サラ・ナイト著『ときめかない≠アとなら、やめちゃえば?』(秀和システム)、ジョージ・ブレシア著『ニューヨークの人気スタイリストが教える似合う服がわかれば人生が変わる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、ディズニープリンセス棚にはスタンダール著『ディズニープリンセス 恋愛論』(講談社)、ウイザード・ノリリー著『私に、魔法をかけて』(同)、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社監修『ディズニープリンセス 愛されて輝く言葉』(KADOKAWA)などが揃えられる。
 
 キャラクターブック棚も画期的。すみっコぐらし、リラックマ、ぐでたま、スヌーピー、猫ピッチャー、(その他の)キャラクター本。これらの棚があることで、エッセイの品揃えがいっそう奥行き感を増している。
 
 この棚にも面見せが少なくない。阿雅佐著・サンエックス監修『すみっコぐらし 心理テスト』(学研プラス)や市川晴子著『センチメンタルサーカス ガラクタたちの夜想曲』(KADOKAWA)といった作品である。
 
 さらに棚割りが細かいコミックエッセイ棚も見逃しがたい。そのテーマはペット、伊藤理沙、益田ミリ、よしたに、家族、旅行、食、仕事、趣味など。
 
 本来のエッセイ棚は著者棚からスタートする。佐藤愛子、篠田桃紅、瀬戸内寂聴、吉沢久子といったアラハン(アラウンドハンドレッド 100歳前後の意味)の著者棚のあとには老いの棚がくる。にくい演出だ。テーマエッセイは旅行、人生、動物、医療とど真ん中の棚づくり。
 
 エッセイの構成に悩む全国の書店にとり、正統性に創造性を加味し、既存のくくりにとらわれない同店のエッセイ棚は、ひとつの模範解答となるだろう。
 
人文系売場
 
 当ジャンルはコンパクトながらパンチが効いている。
 
 郷土棚も棚差しと面見せで着実に揃っているが、思想哲学や心理学の棚はとりわけ訴える力を放つ。NHK Eテレの「100分de名著」で取り上げられた神谷美恵子さんの棚と、その前にある「生きがい」棚には歓びを禁じえない。なぜなら神谷美恵子著『生きがいについて』(みすず書房)は、若いころからの私の愛読書だからである。無人島に1冊しか持っていけないならこの本、と昔から話してきた書物であった。
 
 神谷美恵子棚はあっても「生きがい」棚が人文書にある例はまれであろう。1000坪クラスの大規模店は別にして、私はあまり目にしたことがない。しかも神谷美恵子棚のあとには『夜と霧』(みすず書房)や『死と愛』(同)、『人間とは何か』(春秋社)のヴィクトール・E・フランクル、そして『愛するということ』(紀伊國屋書店)や『希望の革命』(同)、『自由からの逃走』(東京創元社)のエーリッヒ・フロムの棚である。
 
 これらの棚から「生きがいを持って生きよう、仕事に取り組もう」という呼び掛けの声が聞こえてきそうだ。
 
ビジネス書売場
 
 ビジネス書売場は、まずその導入部にレコメンドの多面台があり、齋藤孝著『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、堀江貴文・落合陽一著『10年後の仕事図鑑』(同)、磯田道史著『歴史の愉しみ方』(中公新書)などが全面拡販中である。新刊はビジネス書棚の先頭に6本、押しの銘柄が明確であり、ほぼすべてを面見せで展開する姿はダイナミックな印象。
 
 この棚で特筆すべきは、分類の卓越さである。ビジネス書、なかでも自己啓発本は、内容が似ているようにみえるものが少なからずあり、的確な分類が容易でない。一筋縄ではいかないのだ。したがって「自己啓発」という棚上表示が5、6本もつづくと、全体としてはわかりにくい雰囲気になりやすい。それではお客さまも、探すのが難しく、「え〜い、もういいや」と諦めかねない。そんなこんなで自己啓発の適切な分類は、書店の長年の課題であった。
細かく分類されたビジネス書の棚
 
 この点はどうであったろう。同店の棚上にある小分類表示の順序は、仕事の基本、仕事術、思考法、ビジネスライフ、話し方/伝え方、人間関係となっている。このタイトルだけだと、似たもの同士にもなり、他店とそう変わらないと思われるかもしれない。ところがどっこいである。1本1テーマに沿いながら、各々の棚上小分類に紐づけられた棚割り表示が、その小分類表示に整合しているのは驚き以外のなにものでもない。
 
 たとえば「仕事の基本」では、仕事の基本、石田淳、ミスをしない、できる人、数学力、女性の仕事術、メモ術、読書術、速読法、勉強法、記憶術、「仕事術」では仕事術、生産性を上げる、時間術、スピード仕事術、仕事術PC、資料作成、ビジネス文書、文章力、ビジネスメールなどとなっている。マクロの歯車とミクロの歯車がかみ合って、素直に素晴らしいと思う。
 
 カーネギー、ナポレオン・ヒル、スティーブン・R・コヴィーなどによる、評価が定まった著作を結集したビジネス名著棚も、棚割り鮮度が高く深く心に落ちた。選択の腕が振るわれているのである。
 
 他の書棚はぜひご訪店いただき、この攻め勝つための棚づくりを、自らの目で確かめていただきたい。
 
コミック売場
 
 同店のこの売場は、水準が高いことで知られている。
 
 それは改装後においても変わらない。この売場も全国の書店にとり、手本となりうる。レイアウトも構成も配列も棚割りも正統的。優れた売場は、まずはスタンダードが徹底されるのである。
 
 全体の構成をみると、最初に大きめの新刊台が2台ある。レジカウンター前の少年コミック台と少女コミック台、その近くに青年コミック台があり、それぞれが該当売場への誘引を図っている。
 
 またレジ前の一角には一撃必殺のブックフェア台が設置され、訪問時は原泰久著『キングダム』(ヤングジャンプコミックス)全点フェアを開催中であった。やはりこの売場もキャンペーンゾーンから一歩を踏み出すのである。そして売場の流れは男性コミック、女性コミック、ラノベ、奥側のバトル系へ。
 
 ラノベ文芸への力入れはコミック専門店並みで、特別な新刊台も設置されている。バトル系には画集、アメコミ、アニメ/漫画、特撮、ミニタリーも含まれる。面見せも少なくない。たとえばアメコミでは、アレックス・アリス著『星々の城(1)』(双葉社)、アンドリュー・ファラゴ著『決定版 ハーレイ・クイン大図鑑』(洋泉社)、ウィンザー・マッケイ著『リトル・ニモ1905−1914』(小学館集英社プロダクション)などである。
 
 試し読みの小冊子も数多く、とりわけライト文芸のコミカライズ棚が、 密集といっていいほど充実しているのは、顧客志向によるものというほかにない。
 
(次回につづく)
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2018年8月20日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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