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第18回 愛と知の拠点 ブックエースの次世代型モデル店
        〜TSUTAYA LALAガーデンつくば(1)
 
鮮烈な存在感!
 
斬新なブックフェア「つくばスタイル」
 
 店の入口に足を踏み入れたとたん、都会的な光線が飛んできた。見ると、爽やかな風が吹き抜けるような雰囲気が、その一箇所に凝縮している。そこには「つくばスタイル」と題されたブックフェアが、記憶に深く刻み込んで欲しい、とばかりに光り輝いていた。
 
 フェア表示の仕方も一味ちがった。青空の写真に映える山の絵をバックに「WE LOVE TSUKUBA」と記され、両サイドには「つくばスタイル」の文字が躍る。その前の半円ステージには、50点ほどの厳選された本が並んでいた。
 
 入ってすぐの場所に設置されたフェア「つくばスタイル」は、ことのほか洗練されており、入店したお客さまが感じる店舗イメージは、まずここで決定的に高まるにちがいない。
 
 
 私は、そんな第一印象からこの書店――北関東の有力チェーン、ブックエースが経営するTSUTAYA LALAガーデンつくばが、ホームグラウンドの強みを生かし、知の拠点であろうとする店であることを知った。
 
 ブックエースは、人材育成に積極的なチェーン店である。書店道場の第1クールに同店の書籍リーダー阿部大輔氏、川又書店エクセル店店長の佐々木哲也氏がご参加いただいてから、何人かの方にご受講いただいた。
 
 それで、一体どんなお店かと興味をかき立てられ、つくば店に立ち寄った。そしてなにより先に、企画鮮度が高い「つくばスタイル」フェアに遭遇した。
 
 書籍売場を切り盛りする阿部氏によれば、「つくばスタイル」はつくば市の出身、在住、勤務の著者によるブックフェアである。そのラインアップは思った以上に華々しい。
 
 時の人、筑波大学学長補佐でメディアアーティストの落合陽一氏の著作、『超AI時代の生存戦略』(大和書房)や、『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)をはじめ、エッセイストで絵本作家の澤口たまみ氏による『宮澤賢治 愛のうた』(盛岡出版コミュニティー)、美術家の村上慧氏が著した『家をせおって歩いた』(夕書房)、鳥類学者の川上和人氏の『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(新潮社)、氏の監修による『世界の原色の鳥図鑑』(エクスナレッジ)と『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える野鳥のひみつ』(西東社)、農学者であり昆虫学者の前野ウルド浩太郎氏の『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)と『孤独なバッタが群れるとき』(東海大学出版会)、雲研究者で気象庁気象研究所研究官、荒木健太郎氏の『雲のなかでは何が起こっているのか』(ベレ出版)や『雲を愛する技術』(光文社新書)などの書籍に食指が動いた。
 
 同じく荒木健太郎著で小沢かな絵の絵本『せきらんうんのいっしょう』(ジャムハウス)や、同書で絵を担当した小沢かな氏のコミック作品『ブルーサーマル‐青凪大学体育会航空部‐』(新潮社)は、手づくりっぽいPOPでフレッシュな印象を発信する。さらに、吉野源三郎著『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)で漫画を描いた羽賀翔一氏が、つくば市出身であることから並列拡販中。
 
 柴原保佳著『筑波の見える風景』(ウエップ)、宮本宣一著『筑波歴史散歩』(日経事業出版センター)、雑誌『つくばスタイル』(ニ出版社)のレストランガイドなど、地元本もきちっとセレクトされている。
 
 
1. 店舗概要
 
 「同店の規模は店舗全体で650坪。
 
 本が300坪、レンタル150坪、文具60坪、カフェ50坪、CD・DVDセル30坪、ゲームソフト・トレーディングカード40坪という業容である(別に本・文具共通カウンターが20坪)。
 
 オープンは2016年5月20日。売上げは順調に伸び、利益も店全体、本の部門ともにしっかり黒字という。ダウントレンドの出版不況のなかで、なぜそれが達成できるのか、本レポートでその秘密を探りたい。
 
 現在、本部門の前年比は100%を超えている。ジャンル別動向をみると、売上構成比は雑誌、コミック、児童書、文庫、伸び率は児童書、文芸、コミック、雑誌の順序で高い。
 
 売上げを伸ばすのも利益を増やすのも、その源泉は売場以外にはない。その売場から詳しく当たっていこう。
 
 
2. 売場レポート
 
〈一般ジャンル〉
 書籍売場を、一般ジャンルと専門ジャンルに分けてみる。一般ジャンルでは雑誌と婦人実用書が卓越している。
 
◎雑誌
 同店の雑誌売場は雰囲気が抜群に良い。それは全国的にみてもトップクラスといって差し支えない。スタイリュッシュな売場には「快適に過ごしてほしい」という経営陣の決意と覚悟が垣間見られる。
 
 平面図風に眺めると、雑誌売場は半円形の大きい什器5架が、奥に向かって重なり合うように配置されている。上の写真でお分かりのように、そのうち最初の3列に当たる棚が低いため、見晴らしがよい。
 
 このスタイルは結果として、いわば回遊購買を促す。散歩するようにぐるっと歩き回るうちに、様々な本が目に入り、ページを開きたくなる仕掛けである。
 
 什器そのものは下から平積み、棚差し、面見せと正統的だが、4つ目の高い棚は最上段に面見せ兼棚差し棚がのる。
 
 大規模なスペースを確保した女性向け雑誌は、雑誌全体の左側半分を占め、奥部に広がるように配される。最奥に位置するNHKテキスト2台、健康3台、ハウジング2台、園芸1台の流れもいい。対面にはペット1台とパズル3台。5架目の什器には企画棚があり、扶桑社、新星出版社などのムック特集が組まれている。
 
 扶桑社のムックフェアはブックエースの限定企画。『ESSE 創刊以来のベストレシピ』をはじめとする8点のフェア商品から、2冊以上お買い上げのお客さまに、奥田和美著『たっきーママの決定版 つくりおきおかず180』、もしくは日比野佐和子著『目がよくなる魔法のレシピ』のうち、どちらか1冊をプレゼントする、という画期的な企画である。
 
 「日本最大の料理レシピ東港・軒先サイト『クックパッド』の厳選! レシピシリーズフェア」と銘打たれた、新星出版社の200円オフキャンペーンもある。
 
 ここから女性雑誌は婦人実用につながる。雑誌と書籍が一体となり、購入の利便性向上に寄与している。
 
 雑誌全体の右側は若者向け、大人向けの雑誌となる。若者向け雑誌で力点が置かれるのは、車4台とバイク1台、モーター関係の5台である。この手前には男性誌2台、反対側にアウトドア1台、スポーツ4台がある。
 
 なお雑誌の小分類は棚上でなく、棚差しと面見せの間の棚板に表示される。発売日案内が各棚の大半に取りつけられているのも親切である。
 
 
◎婦人実用
 同店のメインターゲットが30〜40代の女性層であることから、婦人実用書には最大級の力が入っている。当ジャンルの棚什器は4本単位なので、コンパクトに本が選びやすい。どの棚でも面見せ手法が大胆に展開され、生活提案に結びつく。
 
 婦人実用はどれにも充実感があるが、料理書とファッション・手芸が秀逸である。
 
 料理は3連・12本もある。最近、棚移動が実施された。そのアップデートされた新しいテーマは、「料理の基本」「日々のごはん」「お弁当」「日々のごはんの達人」「世界のごはん」「食材・健康食」「専門家になる」「パン」「お菓子」「飲み物」「台所」「おもてなし」。そのどれもが、見事なまでに交通整理されて分かりやすい。
 
 「日々のごはんの達人」とは料理研究家を指し、青山有紀さん、有元葉子さんから渡辺麻紀さん、渡辺有子さんまで数十人の著者の本が、50音順でダイナミックに展示販売されている。棚割りオペレーションがきちんとなされているからこそ、できることではないだろうか。
 
 特筆すべきは、「キーワード陳列方式」が採用されていることだ。たとえば基本料理の「基本の料理」の棚を見ると、「料理の教科書」「料理のきほん」「きほんの料理」という言葉が書名に入っているものが、それぞれ一箇所に集められ、この順番で陳列されているのである。
 
 ファッション・手芸関係も充実している。大きくはファッション、手芸、編み物・パッチワーク、ソーイング各1本の流れである。
 
 棚割りタイトルをみていくと、「ファッション」はファッション全般、スタイリスト・タレントコーディネート、ライフスタイル、ウエディング・キモノ、「手芸」はハンドメイドアクセサリーのあと、UVレジン、フェルト、人形・ぬいぐるみ、かご・バスケット、和小物、その他クラフト、棒針・かぎ針、「編み物・パッチワーク」がレース編み、キルト・パッチワーク、「ソーイング」では赤ちゃん、こども、バッグ・小物、着物、リメイクとつづく。
 
 棚割り構築の濃密さには感嘆してしまう。この辺は女性ゾーンとして形成され、ソファでゆっくり選書できるのも魅力である。
 
 
〈専門ジャンル〉
 専門書で卓抜なのは、ビジネス書と看護書である。
 
◎ビジネス書
 ビジネス書では、自己啓発の著者別が重点棚になる。
 
 同規模店であれば2〜3本のところ、日本人著者が5本、海外著者が2本、合計7本をとっている。ともに著者50音順である。ア行、カ行と棚割り仕切り版が差し込まれ、井上裕之さん、千田卓也さん、苫米地英人さんといった主な著者が表示される。棚7段のうち面見せが3段なのは、単品を拡販していこうという意欲の表れといってよい。
 
 日本人著者棚では、上阪徹著『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス)、佐々木典士著『ぼくたちは習慣で、できている』(ワニブックス)、仲山進也著『組織にいながら、自由に働く。』(日本能率協会マネジメントセンター)、海外著者棚には、リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)、スペンサー・ジョンソン著『チーズはどこに消えた?』(扶桑社)、ロイス・P・フランケル著『大人の女はどう働くか?』(海と月社)などが面見せされる。
 
 エンドの新刊台には、佐藤留美著『仕事2.0 人生100年時代の変身力』(幻冬舎)、梅田悟司著『「言葉にできる」は武器になる。』(日経新聞出版社)、朝倉祐介著『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社)といった売れ筋が並ぶ。
 
 他の棚もビジネス文庫1本、仕事術3本、経営、企業・業界、人事・労務・総務、税務・会計・経理、独立開業、資産運用、株、壁棚に移って経済、金融、法律がそれぞれ1本ずつ設けられ、オーソドックスに構成されている。
 
 
 書店道場第3クールにおけるブックエースチェーンの参加者は、川又書店県庁店店長の西依昌幸氏、TSUTAYA結城店書籍リーダーの長谷部慎一氏、第5クールが、同幸手店店長の小井田茂氏、同春日部16号線店書籍リーダーの檜沢隆史氏である。そして現在実施中の第9クールには、本部のBOOK商品部部長の清宮慎太郎氏、業務改善推進室課長の中内義人氏に参加いただいている。
 
(次回につづく)

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2018年10月19日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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