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第35回 ゆりかごから墓場まで
  〜生涯読書を美しく応援するパルコブックセンター調布店(4)
(前回よりつづく)
 
(3)読みものの棚を堪能する
 
選択の腕が振るわれている読みもの棚
 
 児童書の見どころのひとつ、読みもの棚は第3連にある。第3連の2本目から6本目までの5本がそれにあたる。この棚は小学生の低・中・高学年の順に並べられている。陳列法は、日本の児童文学がある最上段がおおむね著者別で、2段目からはアイテム別となる。独特であるが違和感はなく、ごく自然に見える。
 品揃えは売れ筋だけでなく、選択の腕も振るわれている。そうなると、1段ごとに棚割りを追う誘惑を抑えきれきれないなぁ。ということで、以下、細かく紹介する。よく練られた取り揃えを見ていただきたい。
 読みものの1本目を1段ごとに当たっていくと、@(@段目の略、以下同様)は著者もの(中川李枝子さん、松谷みよ子さん、斉藤洋さん中心)、Aは『わくわくライブラリー』(講談社)、Bは原ゆたか著『かいけつゾロリ』(ポプラ社)となる。
 2本目は、@は著者もの(富安陽子さん、上橋菜穂子さん、角野栄子さん主体)、Aは杉山亮著による『わかったさん』(あかね書房)、『こまったさん』(同)、『あなたも名探偵』(偕成社)、Bが、大葡造著『ほねほねザウルス』(岩崎書店)、斉藤洋絵・宮本えつよし文『おばけずかん』(講談社)等々。
 3本目は、@はやはり著者もので、佐藤多佳子著『シロガラス』、日向理恵子著『雨降る本屋』(童心社)、『火狩りの王』(ほるぷ出版)、押切もえ著『わたしからわらうよ』(ロクリン社)、小手鞠るい著『少女は森からやってきた』(PHP研究所)といった作品が揃う。ここは児童文学のセレクト棚≠ニいう雰囲気。
 Aは、山田明著『キャプテン』(学研プラス)、学研教育出版編『5分後』(同)、Bは、PHP研究所編『ラストで君は「まさか!」と言う』(PHP研究所)、黒史郎・尼野ゆたか・他著『世にも奇妙なストーリー』(西東社)、廣嶋玲子著『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(偕成社)、Cは岩波書店日本ファンタジー作品、プロイスラー著『大どろぼうホッツェンプロッツ』(偕成社)などなどで構成される。
 
 
 私がかつて書店の店長を務めていたとき、リーダーシップの参考書の1冊は、ちばあきお著『キャプテン』(ジャンプコミックス)であった。何人ものキャプテンが、みずからの人間性をベースにしつつ、リーダーシップの様々な形を追求する姿に感銘を受け、ボロボロになるまで読みふけった。その小説版をこの店で発見し胸がざわついた。
 4本目は外国児童文学。@は『星の王子様』(各出版社の作品)、岩波書店外国ファンタジー作品、評論社の児童図書館・文学の部屋とロアルド・ダールコレクション。Aは同じく評論社のラッセル・E.エリクソン著・ローレンス・ディ・フィオリ絵『ヒキガエルとんだ大冒険』。この辺でパオラペレッティ著『桜の木の見える場所』(小学館)、エリック・カーン ゲイル著『魔法使いマーリンの犬』(評論社)、ジュディス ロッセル著『お屋敷の謎 ステラ・モンゴメリーの冒険2』(同)の3点が面見せ中。
 読んで欲しいという思いがこもった棚は、人を引きつけてやまない。むしろ引きつけられて、はじめてその思いを知ることになるのかもしれない。私は、この3点の面見せ商品を眺めていて、なぜか『桜の木の見える場所』に、「読んで欲しい」というメッセージを感じた。一読したところ、主人公は、なんと視力が少しずつ無くなっていく難病の少女だった。著者の体験を小説にしたというが、感じるもの大であった。これが本との、棚との、書店との出会いということだろうか。
 
 Bはペニーワーナー著・ヒョーゴノスケ絵『暗号クラブ』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、メアリー・ポープ・オズボーン著『マジック・ツリーハウス』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、ジェフキニー著『グレッグのダメ日記』(ポプラ社)、Cは、サー・スティーヴ・スティーヴンソン著『少女探偵アガサ』(岩崎書店)、アンドリュー レーン著『ヤングシャーロックホームズ』(静山社)、クレシッダ・コーウェル著『ヒックとドラゴン』(小峰書店)。
 5本目の@はルーシー&スティーヴン・ホーキング著『ホーキング博士のスペース・アドベンチャー』(岩崎書店)、J. K. ローリング著『ハリーポッター』(静山社)、Aポーラ・ハリソン著『王女さまのお手紙つき』シリーズ(学研プラス)、Bは横山洋子監修『10歳までに読みたい世界名作』(学研プラス)、Cは『10分で読める』(学研プラス)。
 5本目のうちで一般読者なら、『ホーキング博士のスペース・アドベンチャー』とか『ヤングシャーロックホームズ』、また意外に『10歳までに読みたい世界名作』や『10分で読める』などにも手が伸びるかもしれない。かくいう私も思いがけず、これらを手に取ってしまった。
 
 
 それはとにかく、担当の柏井氏に、読みものの棚で定番以外の作品を、低・中・高学年向けに分け、推しの強い順番にあげてもらった。
 
 
〈低学年・中学年向け〉
  ラッセルEエリクソン著『火曜日のごちそうはひきがえる』(評論社)
  ロアルドダール著『マチルダはちいさな大天才』(評論社)
  ルーネルヨンソン著『小さなバイキングビッケ』(評論社)
  中川梨枝子著『けんたうさぎ』(のら書店)
  中川梨枝子著『ももいろのきりん』(福音館)

〈高学年向け〉
  ジュディスロッセル著『海辺の町の怪事件』(評論社)
  フィンセッテホルム著『カンヴァスの向う側』(評論社)
  冨安陽子著『絵物語古事記』(偕成社)
  三輪裕子著『ぼくらは鉄道に乗って』(小峰書店)
  サラペニーパッカー著『キツネのパックス』(評論社)
 
 
 定番以外、低学年・中学年向けと高学年向けにわけること、推しの強い順番という3つの縛りがかかった、ややこしいリクエストに柏井氏はすぐさま応えてくれた。そのことからも「この本を読んで欲しい」という深い思いが伝わってきたのであった。
 
 
(4)5つの顔≠持つ提案活動
 
 パルコブックセンター調布店の児童書売場で注目すべきはMDだけではない。5つの顔≠持つ提案活動も見逃せない。単品戦、プロモーション、店頭モニター、ブックフェア、イベントという5つの販促策である。これらの提案活動が、相乗効果を発揮して売上を上げつづけている。
 この対応は、どの店のどのジャンルにも、モデルになりうる総合力を持つものと思われる。それではひとつずつみていこう。
 
〇 単品戦
 はじめは単品戦。この単品戦で、同店はチェーン店や全国水準で高いところを目指している。店全体の売上を上げるため、単品を徹底して売り伸ばすのは、やはり有効な手法となる。子どものための「お金と経済」プロジェクト著『親子で学ぶ お金と経済の図鑑』(技術評論社)、イザベル・シムレール著『あおのじかん』(岩波書店)、平野恵理子著『きょうはなにして遊ぶ? 季節のこよみ』(偕成社)、また新刊の高山なおみ文・長野陽一写真『おにぎりをつくる』(ブロンズ新社)などは、詳細は省くが良い位置につけている。
 
〇 プロモーション面
 同売場のプロモーションの特長は、パネル展や複製原画展を活発に絡ませること。これまで主要著者の展示を積極的におこない、そのなごりが、前述した棚上のサイン色紙として残っている。たとえば上橋菜穂子さん、五味太郎さん、小西英子さんというような方々である。合わせてその数、なんと16枚である。掲示できるのは8枚までのため、ときおり入れ替えている。
 パネル展の成功例として、石井睦美文・布川愛子絵『春のワンピースをつくりに』(ブロンズ新社)、ソフィー・ブラッコール著『おーい、こちら灯台』(評論社)があげられる。
 
〇 店頭モニターの活用
 同店の販促でとくに注目したいのは、前回でも触れた少しデカ目の店頭モニター。同時に5〜6コンテンツを流す。単品の拡販に威力を発揮し、たとえばパット・マーフィー著『カラコロピタン! レゴブロックで作るからくり装置』(ポプラ社)は、チェーン店で一番売り伸ばした。モニターは児童書中心に展開するが、映画関係も効果が高いとのこと。
 今井店長によると、このモニターを使うと、売れ行きはだいたい2.5倍ほどまで増えるという。2.5倍! 誰でも言うは易くだが、結果はなかなか出せないものである。確かな成果に結びつけられる同店のこのシステムは、画期的としかいいようがない。
 
〇 ブックフェア面
 むろん、ブックフェアにも力を入れる。成功例として、2019年初夏に実施した「若し娘がいたら買いたい本」フェアがあげられる。娘さんというより、お孫さんのためにフェアの本を購入するお客さまが多かったそうである。最も動いたのは、ボニ・アッシュバーン文・ジュリア・デーノス絵『かようびのドレス』(ほるぷ出版)。男の子の母親向けにもなにかという声もあったらしい。
 テーマの決め方は、そのときどきのタイミングで臨機応変という方針である。
 
〇 イベント面
 最後はイベント面。パルコブックセンター調布店は、毎月2回、第2、第4土曜日に子どもイベントを開催している。
 「LaQ(ラキュー)をつくる」「おしりたんていを探す」「ドラえもんを探す」などを催すのである。参加者は幼稚園児が多いそうだ。答は店内の壁に貼ってあったり、ぬいぐるみについていたりするが、店内を親御さんと一緒に回って、答を見つけると用紙に書き込み、それをレジに持っていく。すると絵ハガキやシールといった景品をもらえるという趣向である。
 企画した店長の今井智香子氏は「皆さん、親御さんと一緒になって探すのが楽しいみたいです。この館にはおもちゃ屋さんがないので、(その分も)楽しんでもらいたいと思っています。コト消費という意味もありますが、パルコからは『もっとやって』と要請されています」と微笑んだ。
 イベントを含めた様々な提案活動を通じ、家族客の幸≠実現させるシーンこそ、努力する書店員が心底から見たい果てなき物語であり、夢であろうか。
 
(次回につづく)
 

(書店・出版コンサルタント 青田恵一)

(2020年3月24日更新)
青田恵一プロフィール
福島県出身。書店勤務などを経て、現在、株式会社青田コーポレーション代表取締役。書店 ・出版コンサルタント。中小企業診断士。
主著『よみがえれ書店』 『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 『棚は生きている』『たたかうお店のバイブル13冊』『理想の書店』(すべて青田コーポレーション出版部発行:八潮 出版社発売)
               
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