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第102回
耽美系書店員の新井ですが
 向いてないと思いつつ、情熱だけで10年続けてきた書店員だが、ついに存続の危機である。
 
 相変わらず、本を売りたいという欲求は、狂おしいほどだ。だが、「私の宝物」となった美しい物語は、大切にしまっておきたい。見せびらかす趣味はないし、共感を求める必要もない。
 
 思えば中学の頃から、「何読んでるの?」と覗き込まれるのが心底嫌だった。本当に美しい小説は隠しておきたい。私がそれを美しいと感じたことすら、おいそれと知られたくない。これは私の、私だけの物語。
 
 おいコラそこの、気安く触んじゃないよ! バキューン!
 
 それにしても、慣れによる職業意識の低下か、はたまた小説への愛がより深まってしまったのか。人間に対しては発動されたことのない独占欲が、ここにきてすべて物語へ発揮されようとしている。
 
 もう、販促どころではない。POPも書評も書きたくないし、ともすればバックヤードに隠してしまいたい。
 
 これは由々しき事態だ。「新井賞」を受賞したら売上げが伸びるどころか、新井に目をつけられたが最期、店頭から消えてしまう、なんてことがあるかもしれない。
 
 作家から恐れられ、出版社から忌み嫌われ、しかしその揺るぎない審美眼と耽美を追求した生き方に、憧れる者も後を絶たない。その姿はまるで、江戸川乱歩が生み出した美しき女賊「黒蜥蜴」。
 
 7月に予定している第8回「新井賞」は、誘拐予告をもって発表に代えさせていただくかもしれない。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年7月2日更新/ 本紙「新文化」2018年6月28日号掲載)
               
 
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