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第104回
噛み合わない取材
 書店員として、立て続けに数件の取材依頼を受けていた。いずれも、ウェブの情報メディアだった。
 
 その日は遅番で、仕事の後にカフェで落ち合うと、メニューも見ずにコーヒーを注文した彼女は、早速インタビューを始めた。私は自宅から持ってきた本を取り出し、その本について語る。質問に答える。それを4冊分、慌ただしく繰り返す。
 
 どうも話が噛み合わない。相性の問題か、こういった取材では、何を言っても届かないような気がする時があるのだ。そういう時の原稿には、絶望感を味わうことになる。
 
 数週間後、記事はアップされた。数名の本好きが、共通のテーマで本を数冊ずつ紹介する企画だった。事前に自分の原稿は確認して、修正も加えていたが、こうして見ると違和感がある。
 
 そのうち、それと前後して受けた別の取材記事も、ウェブ上に公開された。こちらも、あるテーマに沿って、私が選書をしている。そこで私は、ようやく重大なミスに気付いたのだった。
 
 「この人……、テーマを取り違えている」
 
 似たような取材だったし、直前に企画書を見直さない私は、それぞれの取材で、企画内容をあべこべに受けていたのである。本は選び間違えているし、コメントは的外れであった。
 
 噛み合わないのは誰のせいだ。自分自身に絶望だ。恥ずかしいから、記事は探さないでいただきたい。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年7月30日更新/ 本紙「新文化」2018年7月26日号掲載)
               
 
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