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第106回
重版配本受取拒否不可
 一人暮らしの部屋に、焼きたてのピザが届いた。焦げるチーズの香りにうっかり手を出しそうになるが、頼んでいないピザを受け取るわけにはいかない。それにもう、晩のご飯は炊けている。
 
 今度は勤務先の書店に、刷りたての文庫が届いた。こちらも頼んではいないのだが、なんと、受け取らないという選択肢はないという。
 
 ピザは配達員のミスであったが、残念なことに、本は間違いなく店への納品だった。開封もしていない同じ本の段ボールが、まだ2箱もあるのだが、さらにもう1箱が積み重なる。途方に暮れているうちに、また1箱送られてきた。
 
 いつだって売場はパンパンだ。他の売れ筋を退かして展開場所を増やすことが、大量に送りつけることで可能になるなら、ピザ屋は焼きたてのピザを抱えて、ピンポンを押しまくるだろう。ご飯なんて冷凍庫に押し込んで、ピザにしちゃえよ。もう焼いちゃったんだ。責任取れよ。そんでもって金は払えよ。
 
 だが、冷凍庫と同じで、書店のバックヤードも四次元ではない。過剰なストックは、作業を確実に滞らせる。しかし不要な在庫を大量に返品すれば、店の信用は失われる。
 
 きっと様々な事情があるのだろう。本を売りたい思いは同じはずである。
 
 だが、売場に立つ書店員の判断に任せてもらえないことが、以前より増えてきた。つまり、もう君に任せちゃいられない、ということか。結局怒りは、無力な自分へと向かう。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年9月3日更新/ 本紙「新文化」2018年8月30日号掲載)
               
 
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