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第109回
レジディレクター
 上司から「ちょっと来て」と呼ばれ、どうせまた説教だろうと渋々バックヤードについていくと、1枚の紙を渡された。
 
 「新井さんはレジ番の時、自分がレジに入ってしまうでしょ」
 
 それの何がいけないのだ。
 
 「それも必要だけど、社員はディレクションするためにいるの」
 
 確かにその上司は、レジから一歩下がって、12台並ぶレジの間をゴールキーパーのように動いていた。その紙には、そこで何をすべきかがびっしりと並び、特に太字で、アルバイト全員の名前を覚えて必ず名前で呼びかける、とあった。
 
 レジの頭数が増えれば、行列は早く解消するように見える。だが、フォローに回ったほうが全体のスピードがアップし、ミスやクレームにもすぐ対応できて、大きなトラブルに発展しにくい。結果として、効率が上がるのだ。
 
 そして何より、そういうポジションで小姑のように目を光らせていると、少なくともこの人がいるときはちゃんとしていよう、という意識が芽生える。
 
 確かに私もアルバイトの頃、レジ番の社員によって、背筋の伸び方が変わっていた。そうか、私もそういう風に見られる立場になったのか。
 
 「新井さんはそういうの、苦手でしょう」
 
 見抜かれている。
 
 「でも、実はできるんじゃないかと思っているんだけど」
 
 …そう、私はできる。本当はできる子なんだ! さすがの人心掌握術なのであった。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年10月15日更新/ 本紙「新文化」2018年10月11日号掲載)
               
 
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