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第78回
これからの料理書は…
 つい、もやしと豆苗を豚肉で巻いてレンジでチンしてしまった。醤油と鶏がらスープの素とラー油のタレをかけて、いり白ごまをぱらり。出来心だった。
 
 私は書店員だ。一時期、実用書を担当していたこともある。それなのに……。
 
 探していたわけではない。あっちから勝手に入ってきたのだから、まったく迷惑な話だ。
 
 仕事帰りの満員電車で料理書を開いていたら、目の前の乗客に舌打ちされた。揺れた時に本の角が当たったらしい。本は諦めて、スマホを取り出す。習慣でインスタグラムを開くと、豆苗をざっくりと切る動画が流れた。
 
 へぇ、豆苗の根ってそんなに切り落とすのか! 巻いてる! チンした! 気付いた時には「レンジで簡単! もやしと豆苗の豚巻きレンジ蒸し」の虜になっていた。
 
 レシピ動画を無料で配信するサイトやアプリは、どう考えても料理書の売上げを脅かす存在だ。それをお前という奴は、危機感を抱くどころか、喜んで作って食べている。忸怩たる思いに駆られ、今後の料理書はどうあるべきかを食後に考えることにしたが、睡魔に襲われて何も思いつかない。
 
 布団にひっくり返って本棚を見上げると、料理書が目に入った。『カニカマ100皿』(文藝春秋)、『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)、『いちばんおいしい家カレーをつくる』(プレジデント社)…と。
 
 どうして私はそれらの本を、お金を出して買ったのか。ムム…何かそこにヒントがありそうな気がするが、満腹で寝てしまった。
 
(三省堂書店/新井見枝香)
(2017年6月28日更新/ 本紙「新文化」2017年6月22日号掲載)
               
 
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