出版業界 専門紙 新文化 出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ
第88回
本と揚げ物
 近所のスーパーで売っている有機野菜は、農薬を抑える分、虫や雑草を取り除く手間がかかっている。そうしたものが割高になるのは当たり前のことだ。
 
 しかし、例外がある。本と揚げ物だ。
 
 本を書くのにかかった手間や労力はそれぞれ違うはずだが、3日で書けたから300円でいいよ、取材で海外に行ったから1万円は欲しいな、という値段の付け方はしない。体裁によって相場があり、たいてい似たような価格になっている。
 
 肉屋で売っている揚げ物も、コロッケはとんかつより安いと相場が決まっている。「キテレツ大百科」のテーマ曲で、手間がかかる料理であることは知られているはずだが、コロッケはなにしろ材料が安い。
 
 また本の話に戻るが、連載をまとめた本でも、書き下ろしでも、価格には差がない。
 
 出版社が肉屋だとして、コロッケ方式で値段を決めるなら、連載の原稿料が発生していない分、書き下ろしは安いはずだ。
 
 しかし、じゃがいもを作る農家が著者だとすると、〆切まで一気に書き上げなければならないという負担や、書いている間は無収入になるという不安が重くのしかかるため、じゃがいもの値段は上がってもおかしくない。「書き下ろし」はさながら、有機野菜で作ったコロッケなのだ。
 
 それはとんかつより安いのか、高いのか。
 
(三省堂書店/新井見枝香)
 
(2017年11月20日更新/ 本紙「新文化」2017年11月16日号掲載)
               
 
購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お問い合せ
メール送信
リンク

新文化通信社