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第92回
音楽と本
 「ホルン」をご存知だろうか。登らないし、お菓子でもない、この世で最も美しい音色を持つ金管楽器だ。
 
 子供の頃からありとあらゆる楽器に触れ、自分って天才かもしれないと思っていた。しかしこいつめ、ウンともスンとも鳴りゃしねぇ。だから猛練習して、音大はホルンで入学した。
 
 管がカタツムリのように巻かれた部分を胸に抱き、朝顔のように大きく開いたベルには右手をそっと差し込む。音域は幅広く、木管五重奏に加えられるほど、音が柔らかいのが特徴だ。アルプスの丘でポッペポーと長閑に鳴る「角笛」と同じ仲間だと言えば、想像がつくだろうか。
 
 どんな音か聴いてみたくなったら、私の仕事場に来てほしい。モーツァルトのホルン協奏曲が、かなり高い頻度で店内に流れている。
 
 誰の趣味かは知らないが、本を選ぶのにあれほど適した曲はない。音色に合わせて呼吸が深まり、ゆったりしつつも、どこかワクワクとしたテンポが気持ちに重なる。
 
 レジカウンターのない2階から上は、電子音やお金の音もせず、ちょっとした異空間だ。椅子に座って膝の上に本を開いたお客様から、微かな寝息が聞こえてきても、少しの間ならそっとしておきたいと思ってしまう。
 
 心地よい音に包まれて、本を読みながらウトウト…。そら最高に幸せだわな。
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年1月30日更新/ 本紙「新文化」2018年1月25日号掲載)
               
 
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