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第93回
長ねぎと帯
 「鍋物が恋しい夜、八百屋に行くと普通の長ねぎはなく、泥だらけのねぎだけが売れ残っていた。
 
 キッチンでそうっと外側を脱がすと、眩しいほど白い肌が表れて、見違えるように食欲をそそるねぎになった。
 
 そんなねぎのことを売場で思い出したのは、色褪せたり破れたりした文庫の帯を、片っ端から外している時だ。
 
 棚に差したり抜いたりすると、どうしてもよれたり破れたりしやすい。そういう帯を脱がせた途端、真新しい表紙が露出して、急に購買意欲をそそる本になるのだ。
 
 八百屋では、長ねぎの青い部分が茶色くなってしまうと、ばっさり切り落として売る。白い部分に問題がなかったとしても、枯れて食べない部分を付けた長ねぎを買うことに、人は抵抗を感じるのだろう。大根だって、萎れた葉を付けっぱなしにするくらいなら、切り落としてしまったほうが美味しそうなのだ。
 
 それは書店に並ぶ本にも同じことが言えるが、野菜と違って、付け替えることができる。
 
 最近では、別に汚れてもいないのに、重版や映像化のタイミングで帯を何度も変える本も多い。だがそれには、結婚式のお色直しのように、コストと手間がかかっている。
 
 はたして、本当にそれに見合う効果が出ているのか。私はそれに懐疑的だ。花嫁の親族以外は概ね退屈で、付き合わされる新郎は、もういい加減にしてくれ〜と内心思っているのかもしれない。
 
 確実なのは、花嫁の自己満足だけなのである。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年2月13日更新/ 本紙「新文化」2018年2月8日号掲載)
               
 
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