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第98回
歯医者さんのブログ
 歯医者に通い続けることがどうしてもできなかった。治し切らずに止めてしまうせいで、口内にいくつもの爆弾を埋め込んだ状態が続いている。それは時折爆発し、結果として、急ごしらえの義歯を埋め込むことになった。入れ歯安定剤のCMみたいだが、せっかくのお食事を心から楽しめない状況は辛い。
 
 しかし、そんな荒れ果てた地雷原に足を踏み入れ、ひとつひとつ撤去することに情熱を燃やす1人の歯科医師がいた。すこやか歯科(仮)のタカハシ先生だ。
 
 昨年末から毎週欠かさず通い続けているのは、先生が好みのタイプだから、という理由だけではない。先生のブログがひっくり返るほど面白くないのだ。過去2年分を読み返しても、上達した形跡がない。上手い下手ではなく、もっと根本的な問題だ。
 
 そこには、患者を増やしたいという思いすら善意に感じられる、誠実すぎる文章が綴られていた。更新の間があけば、ごめんなさいと謝っているが、おそらく誰も待ってはいない。それでも彼は謝るのだろう。
 
 自論だが、文章を面白くするには、ある程度の性格の悪さが必要だ。先生の文章にはそれが圧倒的に欠けている。
 
 しかし、私のような性格の悪い読み手には、思わぬ効果を生んだ。タカハシ先生は、信頼できる。私にとって最後の歯科医師になるかもしれない。函館旅行に触れた記事で先生に妻子がいることが判明し、私の淡い恋心は一気に萎んだが、それでも私は通い続けるだろう。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年4月27日更新/ 本紙「新文化」2018年4月26日号掲載)
               
 
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