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第99回
オラは今日も畑に出る
 毎日毎日、引っこ抜いては千切り、千切っては集め、腰を屈めたまま自分の畑をウロウロと歩き回っている。これから育つもの、もう育たないものを瞬時に判断するには、直接見て触るのがいちばんだ。それに基づいた、ほとんど言語化できない動物的勘のようなものに頼って、私は作業をしている。
 
 特別に育てたいものがあれば、根気強く手をかけながら観察する。だが、愛情が深まりすぎると冷静な判断ができなくなる。おまけに人間の脳には、思い込みも錯覚も健忘も起こり得る。だから、オラはこうして畑サ出ても、POSのサポートはありがたく受けてるダ。
 
 これは「新農家」ではなく「新文化」のコラムなので、収穫していたのは農作物ではなく、本のスリップである。千切ったそれは胸ポケットに一旦収納し、発注に役立てるわけだ。
 
 だが、野菜の成長と違って、書籍の流通は暦通りに休みがある。ゴールデンウィークの場合、4月の末に発注した商品が、5月の半ばになっても店着しない、なんてことも珍しくはない。冗談みたいなタイムラグだ。野菜だったら腐っている。
 
 書店員である私が大型連休や盆暮れ正月を憂うのは、シフトが無情にも曜日制であるというだけではない。そのせいで世間の休日に疎く、連休を見込んだ発注をつい忘れてしまう。今年もご多分に洩れず、いくつか品切れを起こしてしまった次第だ。面目ない。
 
 タイミング的にスリップレス文庫の話を期待されたかもしれないが、私はそれ以前の問題で躓いている。
 
(三省堂書店神保町本店/新井見枝香)
 
(2018年5月22日更新/ 本紙「新文化」2018年5月17日号掲載)
               
 
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