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第3回
6出版社合同企画と15坪の本屋
 今は「パイの拡大」より「波紋の広がり」を意識すべきときだという話を、最近編集したソーシャルデザイン系の本の著者から聞き、僕がやりたいことはまさにそれじゃないか、と深く納得しました。
 
 目の前にあるパイを奪い合ったり、そのパイをむりやり大きくしようとしても、「なんでアイツはお腹いっぱいなんだ。俺の分を食いやがって」みたいに、負のエネルギーが生まれるだけでしょう
 
 そうではなく、ただ「石を投げる」。たとえ小石であっても、池に投げ込みさえすれば、水面は波打ち、波紋が生まれます。大事なのは、小さくてもいいから、勇気を出して何かしら新しいアクションを起こすこと。そうすれば必ず波は生まれ、いずれどこかの岸にたどりつくでしょう。
 
 規模や量、数で勝負する時代はもう終わります。いま(とくに若い人が)やるべきは、小さくても波紋が広がっていくような活動を行うことです。まわりからの批判や中傷、揶揄はすべて無視していい。
 
 僕は「池袋コミュニティカレッジ」という老舗のカルチャーセンターで、今年の4月から9月まで、「この変化の時に何を学ぶべきか」というイベントを企画、実施しました。各出版社の2O代、30代の編集者に声をかけ、各々がプロデュースする授業を連続講義的に行っていくという「出版社合同企画」です。
 
 賛同し、協力してくれたのは、朝日出版社の綾女欣伸さん、ダイヤモンド社の横田大樹さん、ソフトバンククリエイティブ(当時)の上林達也さん、ディスカヴァー・トゥエンティワン(当時)の徳瑠里香さん、そしてピースオブケイクの加藤貞顕さんです。出版社横断的に若い人間が組むことで、何か「波紋」が生まれるのではないかと思い、みんなで取り組んでいきました。
 
 先日、同じ池袋に開店した「天狼院書店」の三浦崇典さんも、僕と同年代で、石を投げ続ける男です。いま、個人で書店を立ち上げる人間なんて、ほとんどいません。儲からないからです。そんななか、三浦さんはあえてそれをやる。売場はわずか15坪。売上げは微々たるもの。さらに、場所も悪い。でも彼はまさに、小さいながらも「波紋の広がり」を目指しています。
 
 彼の描く未来は、いろんな人が様ざまな場所で書店を経営するようになって、「Reading Life(本を読む生活)」が「あたりまえ」になること。そのために、自分が成功事例となって、この時代の個人経営書店のあり方を示し、書店の持つ可能性をも広げようとしています。「面白そう、私もやりたい!」という人間が、必ず彼の後に続いていくと僕も信じています。
 
 池袋の町全体を書店化しようという、突拍子もない挑戦も近々はじめるそうなので、ぜひ一度みなさんも足を運んでみて下さい。数々の施策に、三浦さんの人柄とチャレンジ精神に、必ず刺激を受けるはずです。
 
 彼の15坪の書店には、可能性しかありません。「パイの拡大」ではなく「波紋の広がり」。規模や量、数で勝負する時代は、もうすぐ終わります。
 
(文責=冨田薫)
(2013年10月4日更新 /本紙「新文化」2013年10月3日号掲載)
柿内芳文プロフィール
星海社シニアエディター、星海社新書編集長。1978年、東京都町田市生まれ。慶應大学卒業後、光文社に入社。光文社新書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『99.9%は仮説』などを手がける。2010年、星海社へ移籍。星海社新書『武器としての決断思考』『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』などがベストセラーとなっている。新書編集歴11年の自称「新書バカ」。ツイッターアカウントは@kakkyoshifumi
               
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