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第5回
ポートランドのパウエルズ(上)
Powell's Books  Powell's City of Books 住所:1005 W Burnside Portland, OR 97209
写真=長田美穂
独立系で世界最大宝探しのような店内散策
 
 シアトルから車で4時間、西海岸・オレゴン州の商都ポートランドは、穏やかな気候の小都市だ。路面電車の走る目抜き通りに、独立系書店では世界で最大、在庫冊数も最多を誇る書店「パウエルズ」が鎮座している。
 
 パウエルズの店舗面積は2200坪。周辺なら4つのビルが並ぶ一区画を、すべてパウエルズが占めている。
 不思議なことに威圧感はない。オレンジ(実用書)、パープル(社会科学系)と色で区分けされた9つのフロアは、小箱を並べるように縦、横に連なっている。大きな店内地図を手に、客はフロアからフロアを探検のように歩く。
パウエルさん
 
 在庫は115万冊。驚いたのは、作品ごとに新刊、中古本を並べていること。ロングセラーは何社から何種類も、装丁も違うものが出ているが、それらが一堂に会している。
 岩波文庫で邦訳のある小説「シスター・キャリー」は、中古ばかり13種類、2.65ドルから7.95ドルの値で並ぶ。トム・ロビンズの一作は新刊、2種類のペーパーバックが6.95ドルから27.5ドル。客は宝探しのように1冊1冊をほじくり出し、手に取り、値段、状態を見ている。
店内のようす
 
 「パウエルズはハートのあるアマゾン」と称した記事があった。たしかにリアル書店版アマゾンのよう。また所々に「1ドル均一」「5ドル均一」がある。こちらはさながらブックオフか。
 
 外国語書籍のコーナーには各国の現地書籍が並ぶ。日本の書籍棚もある。文庫本を中心に、壁2面分の棚を、「小川洋子」「桐野夏生」やマンガが覆っている。
 
 店内に漂う、このゆるい雰囲気は何だろう。客は脚立に腰かけ、床に座り込み、時に寝そべったりして、「立ち読み」に没頭している。店員は気にするそぶりなし。カフェは「5冊まで持ち込み可」のはずなのに、10冊は持ち込んでいる人も。赤の他人が、同じテーブルに座って読書談義をしている。
1ドルコーナー
 
 ビル全体は古びている。天井はボロボロ、雨漏りを溜めるバケツまでかかっている。柱には「中古車」の文字が。元は中古車ディーラーのビルだったのだ。
 
 「少しは改修した方がいいとは思ってる。でもこの古びた感じは、わざとでもあるんだ」。71歳のオーナー、マイケル・パウエル氏は言う。
 
壁には「中古車」の文字、天井にも痛みが
 
  「地域の人達が、くつろいでいてくれる雰囲気にしたいから。一時はピカピカのきれいな店にしようとしたが、だめだった。中古本も置く店には、この感じが合うんだ」。そして中古本こそが今も昔も、飛躍の鍵だったという。

 

(長田美穂・フリージャーナリスト)

(2012年5月18日更新  / 本紙「新文化」2012年5月10日号掲載)
(次回は6月1日ごろ更新予定です)
長田美穂氏のプロフィール
 
長田氏は1967年奈良県生まれ。東京外国語大学を卒業後、日本経済新聞社に入社。99年に退社し、2010年秋よりシアトル在住。著書に『ガサコ伝説「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社)、『問題少女―生と死のボーダーラインで揺れた』(PHP研究所)がある。
               
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