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第13回
出版社のセールス・レップ(上)
イーグルハーバー書店
写真=長田美穂
イーグルハーバー書店
 
 イーグルハーバー書店で「出版社のセールス・レップが本について語る」イベントがあるという。
 
 セールス・レップとは、「出版社が契約する、または社員として抱える営業担当者」という職種。著者でも担当編集者でもなく、営業マンが書店の客を集めて本について話すイベントなんて、日本ではちょっと考えにくい。
 この日やってくるのは米国最大手・ランダムハウスの2人。「新刊だけでなく過去の本も含めて、彼らが個人的に好きな本を紹介するらしいの、楽しみでしょ」と、主催する同店の店員はいう。
 夜7時をすぎると、ぽつりぽつりと、熟年夫婦や老婦人らが、用意されたクッキーを手にイスに腰かけはじめた。平日の夕食後という遅い時間に、およそ30人が集まった。登壇したのは、ランダム・ハウスのセールス・レップ歴20年のベテラン、ケイティ・メーハンさんとデヴィッド・グレンさん。
飲み物やお菓子が振るまわれる
 
 「皆さんの中に、マイケル・オンダージェのファンは、いますか?
 オンダージェといえば、映画にもなった『イングリッシュ・ペイシェント』が最高傑作。私もそう思うわ。この『ザ・キャッツ・テーブル』は私がオンダージェの中で2番目に好きな作品です」。メーハンさんは、軽妙に話し始めた。
 
 「夢の世界に遊びたい時におすすめなのは」とファンタジーに移り、スリラー、ココ・シャネルがナチスの協力者だったと明かしたノンフィクション(邦訳「誰も知らなかったココ・シャネル」)などを、手にとっていく。グレンさんは、「ランダムハウスの倉庫は、フットボールスタジアムほど巨大です」と、出版社のバックステージに触れ、客の興味をそそりながら本の話に入った。
ゆったりと座りながら話しを聞く客
 
 「僕が好きな本ベストテンは、時によって、いや毎日かな、変動があるんだけど、必ず入っているのがこの本。第二次大戦中のドイツで起きた3人の人物を巡る異なる物語が、最後に一つに重なる。すごい小説です」。こういって薦めたのは、「スケルトンズ・アット・ザ・フィースト」(クリス・ボージャリアン著)。
 ジェスチャーを交え、紙も見ず、思い入れたっぷりに「本当におもしろいんだ」と語る2人。アメリカ人にはプレゼン上手な人が多いが、まるで話芸のような領域に達した語りっぷりだった。1時間で紹介した本は、合計20冊。「僕には本への情熱があるから、実際、語れば語るほど本が売れるんだ」。業界紙で「今年のセールスレップ賞」に選ばれたこともあるグレンさんは、「語りの威力」について、話した。
 

(長田美穂・フリージャーナリスト)

(2012年10月26日更新  / 本紙「新文化」2012年10月11日号掲載)
長田美穂氏のプロフィール
 
長田氏は1967年奈良県生まれ。東京外国語大学を卒業後、日本経済新聞社に入社。99年に退社し、2010年秋よりシアトル在住。著書に『ガサコ伝説「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社)、『問題少女―生と死のボーダーラインで揺れた』(PHP研究所)がある。
               
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