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第17回
スター図書館司書(上)
ナンシー・パール氏の講演
写真=長田美穂
全米一有名な「図書館司書」が生まれたワケ
 
 ニューヨーク・タイムズは、「図書館司書のセレブリティ」と彼女を呼んだ。あるいは「読書家にとってのロックスター」(アメリカの公共ラジオ局ナショナル・パブリック・ラジオ=NPR)とも。
 その人の名は、ナンシー・パール。04年に定年になるまでシアトル公立図書館で図書館司書をしていたパール氏は、本についての膨大な知識と記憶力に支えられた熱いトークで、全米にファンをもつ。パール氏を模したフィギュアも市販されているほどだ。
ナンシー・パール氏
 
 活躍の場はラジオ、新聞、テレビなどのメディアや本についての講演イベント。と書くと、なんだ文芸評論家かと思われそうだがそうではない。パール氏の持ち味は、歴史、SF、ミステリー、世界各国の文学、児童文学、ルポ、同性愛小説等々、ジャンルの大小に関わらず、とにかく幅広く本を読んでいること。
 
 だから、たとえば「ナンシー・パール選」と銘打って「オムニバス愛読者へのベスト本」「ベスト・イタリア系移民作家の小説」と、どんな分野についてもお勧め本を語り、視聴者からの質問に答えてみせる。
ナンシー・パール氏のフィギュア
 
 作品や作家の批評はしない。語るのは、なぜ、どのようにその作品が自分の心を打ったかだけ。いつも明るく、愛溢れる語り口は、映画評論家の故淀川長治氏のようといったらいいか。
 
 「私が有名になったのは、たまたま、偶然が重なったんです」とは本人の弁。子どもの頃から無類の本好きで、夢かなってデトロイトで図書館司書になった。夫の転勤で住んだオクラホマ州では地元のラジオ局で本についての番組を任された。94年にはオクラホマ州の図書館の同僚がシアトル公立図書館の幹部になり、パール氏は請われてシアトルへ。
 
 セレブ図書館員誕生のきっかけは、03年に出した著書「Book Lust」(本への渇望)が12万部のベストセラーとなったこと。いつもラジオで話していることを書いてみたら、というシアトルの地元出版社の提案に沿って書いた。
 同じ月に、彼女を模した図書館司書のフィギュアが発売になった。パーティーでフィギュア・メーカーの社長と「図書館司書は、時に人の人生を変える仕事よ」といた立ち話をしたのがきっかけだった。
講演の様子
 
 パール氏の存在は大いにメディアに取り上げられ、04年秋には全米で放映するNPRの本のコメンテーターに選ばれた。
 
 本の街、シアトルにぴったりのアイコン誕生。ひとつのアメリカン・ドリーム−−。しかしパール氏は、2012年、思わぬ形でシアトル書店業界から反発を買うことになった。アマゾンとの提携、である。

<(下)へつづく>

(長田美穂・フリージャーナリスト)

(2013年2月1日更新  / 本紙「新文化」2013年1月17日号掲載)
長田美穂氏のプロフィール
 
長田氏は1967年奈良県生まれ。東京外国語大学を卒業後、日本経済新聞社に入社。99年に退社し、2010年秋よりシアトル在住。著書に『ガサコ伝説「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社)、『問題少女―生と死のボーダーラインで揺れた』(PHP研究所)がある。
               
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