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第24回
待ち遠しい日
 新型コロナウイルスの影響で、勤め先の書店がしばらく休みになる前日、私は大量の本を買い込んだ。売場で気になっていたコミックや、分厚い小説の単行本、ちょっとマニアックな料理書に、最近気になるヨガや台湾の特集をした雑誌など、とにかく欲しい本を持てるだけ全部だ。
 
 その日働いた分のお金はすべて本代に消えたが、明日も明後日も買えないのだから、買い溜めが必要だ。トイレットペーパーがなくなっても死なないが、ワクワクする本がないと、心が死ぬ。
 
 休憩室の冷蔵庫に飲みかけのジュースは残っていないか。持ち帰るべきゲラやプルーフはないか。紙袋がもう一つ必要だ。
 
 大荷物を持って店を出る際、上司に「良いお年を〜」と言われて、ふっと心が和んだ。確かにこの感じ、年末の仕事納めに似ている。もちろん、そんな平和な状況でないことはわかっている。この店も、出版業界も、日本も世界も、大変な打撃を受けている。それでも私は、笑顔で職場を後にすることができた。
 
 休み明けの納品と、補填されることのない損失を思うと気が遠くなる。だが、営業再開日にタイムカードを切ったら「あけましておめでとう」と言って、皆でまた笑い合える。それだけは楽しみだ。
 

(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

(2020年5月8日更新  / 本紙「新文化」2020年4月23日号掲載)
               
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