出版業界 専門紙 新文化 出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ
第34回
本が吸うにおい
  先日、新しくできた商業施設を訪れると、やけに本棚が目立つレストランが目に入った。ガラス張りの店内は、中央にキッチンが見通せるカウンター、その右側に本が並び、手前にカフェのようなスペース、左側は全くのレストランという作りだ。数千冊ありそうな本は、インテリアではなく売り物らしい。
 
  書店併設のカフェは珍しくないが、メニューにはケーキやサンドイッチくらいのイメージである。本格的な調理の場が、売り物の本と同じ空間にあることは珍しいように感じた。
 
  紙でできた本は、においを吸う。人に借りた本は、その人の家やカバンの中のにおいがするし、古書店の本は、虫干ししても独特のにおいが抜けない。自分ではわからないが、きっと私の本からも何らかのにおいがするのだろう。新刊書店にもそれぞれ店ごとのにおいがあって、買った本を家でかぐと、ほのかに残っていることがある。
 
  あのレストランに置かれていた本は、家に連れて帰ったらどんなにおいがするだろうか。
 
   たとえば花屋と書店の複合店があったら、やっぱり花の香りを吸うのだろうか。海の近くの書店は、温泉街の書店は、外国の書店は……。私は本のにおいをかぐのをやめられない。
 

(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

(2020年10月8日更新  / 本紙「新文化」2020年10月1日号掲載)
               
購読の申込みは
↓↓コチラから↓↓
購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お知らせ
メール送信

新文化通信社