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第1回 タイトルとカバーが決まるまで
自分の執筆した本が、出版社(川上)から書店・読者(川下)にどんな風に流通していくのか? 今号から4回にわたってレポートしていきます(連載にいたった経緯は本紙・8月26日号で)。1回目の今回は「タイトルとカバーが決まるまで」です。 (本紙「新文化」2010年9月2日号4面掲載)

 本は中身とカバーで構成されています。中身はもちろん大切だけど、やっぱり書店で最初にお客さんの目につくのは、タイトルとカバー。これはどうやって決まるのでしょう?

 タイトルは著者が決めると思っている方も多いようですが、ビジネス書や実用書ではほぼ出版社が決めます。決め方は出版社によってさまざま。もっとも多いのは、編集者がいくつかタイトル案を、営業や上層部が出席するタイトル会議で提案して決める、というパターン。

 カバーのデザインも同じく出版社が決めます。もちろん、著者も意見は言います。僕の場合、今までの本はタイトルもデザインも事前に相談してもらうことが多く、ほぼ自分のイメージ通りのものになっています。

 今回、川上から川下までを体験する拙著『イメージ通りに仕事が運ぶ ビジネスマンのシナリオノート』(クロスメディア・パブリッシング)に関しては、執筆する前から出版社の編集者とタイトル案を何度も何度もやり取りしました。

  『仕事の地図(シナリオ)を描きなさい』『商品、サービス、自分を売るシナリオの作り方』などいろいろな案が出る中、編集者から提案されたのが上記のタイトルです。僕自身「いいな」と思ったので、「それで行きましょう」と即答しました。

 カバーデザインに関しては、今回はベストセラーを数多く手がけているデザイナーの渡邉民人さんに担当していただいています。渡邉さんからあがってきた3つのラフ案を見せてもらい意見を求められました。1案目と2案目はどちらも写真。本としてカッコよくはなるのですが、中身とちょっと離れてしまう危険性もありました。僕も編集者も「これがいい!」と一致したのが、使い古したノートパット風のカバーデザインでした。

 タイトルとカバーデザインが決まると、後は本の中身や帯とともに印刷にまわされます。ただ今回に関しては、本のタイトルやカバーデザインについて、最終決定する前に書店員の方に意見をお伺いすることしました。
 お願いしたのは、この連載の第4回で本の搬入展示を体験させていただくことになっている有隣堂ヨドバシAKIBA店。ビジネス書担当の門脇順子さん(当時)に意見をお伺いしました。
左から有隣堂の門脇順子さん、著者の川上さん、
クロスメディアパブリッシング社長の小早川幸一郎さん

 門脇さんは、毎日納品されてくる数多くの本に関して、以下のポイントだけは最低チェックしてから棚に並べると言います。チェックするポイントは、「タイトル」「カバーデザイン」に加え「まえがき」「目次」「あとがき」。この5点をチェックすると、売れるかどうかがおおよそ判断できるらしいのです。

 そんな目利きの門脇さんに、今回の本のタイトル、デザインを見てもらいます。ドキドキな瞬間。
「ノートを使い古した感じのデザインがとてもいいですね。売れそうです」

 ふー、よかった。ま、でも著者を前に「売れない」とは言いにくいかも。

 門脇さんによると、カバーは寒色系より暖色系の方が売れやすいとのこと。最近はデスクの上に置いても恥ずかしくない、重厚なデザインの本が売れる傾向にあると言います。

 タイトルに関しても聞いてみました。とくに「ビジネスマン」という表現。最近では「ビジネスパーソン」という言い方をすることも多いので。 「『ビジネスマン』の方が一般的でしっくりくると思います」

 こちらもよかった。

 続いてまえがきや目次も読んでいただきました。

 「まえがきで、本の内容と著者のやってきたこととのバランスはちょうどいいと思います。 目次はもう少し見やすい工夫があった方がいいかもしれませんね」

 なるほど。他に門脇さんならではの視点だなあって感心したのは、あとがきについて。「あとがきに関係者への謝辞がない本はあまり売れません」という法則があるらしいのです。僕は今まで本で、編集者の方への謝辞はできるだけ入れるようにしてきましたが、これからも続けようと堅く心に誓いました。
門脇さんにカバー、タイトルの感想をきく

 また出版社経由で、大阪にある喜久屋書店阿倍野店副店長の石峰茂治さんにも、アドバイスをいただきました。

 石峰さんからは、会社員をビジネスマンとサラリーマンにわけ、どの部分が響く、響かないを細かく分析していただきました。

 本のカバーデザインに関しては、門脇さん、石峰さんともに好意的で、売れない本に共通セオリーに当てはまっていないので、ほぼ原案通りに進行することにしました。

 「まえがき」は、石峰さんから「長いので、このままみんな読まない」という指摘をいただき、なるほどと思ったので、かなり短くしました。

 読者に一番近いところにいるだけあって、おふたりとも、こちらが気づいてなかったポイントを鋭く指摘してきます。やっぱり書店員さんってスゴイです。門脇さん石峰さん、本当にありがとうございました!

 今回はスケジュールの関係でおふたりしかお話をお伺いできませんでしたが、次回はもっと多くの書店員の方々に意見をお伺いできたらいいな、と思いました。

 こうして、タイトルやカバーデザインが決まった本は、印刷所で製本されます。いよいよ商品としての本が製造されていく瞬間です。

そしてここからは僕にとっても未知の世界。次回は印刷現場からのレポートをお届けします。

(川上徹也)

(2010/9/7更新)
 
 川上徹也氏のプロフィール
 
ストーリーの力で、会社・商品・個人を“売れ続けるブランド”にするクリエイティブディレクター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。2008年よりビジネス書作家としても活躍。著書『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』(クロスメディア・パブリッシング)『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)など多数。

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