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第2回 印刷・製本の現場
自分の執筆した本が、出版社(川上)から書店・読者(川下)にどんな風に流通していくのか? 2回目は本が印刷製本されていく過程です。 (本紙「新文化」2010年9月9日号4面掲載)

いよいよ自分が執筆した本が印刷製本されていく過程です。

印刷と製本はもともと別工程ですが、大手の印刷会社の場合は、一括して行う場合もあります(実作業は協力会社に外注することも多いようです)。

今回、川上から川下までを体験する拙著『イメージ通りに仕事が運ぶ

ビジネスマンのシナリオノート』(以下『シナリオノート』)に関して、一括して印刷製本してもらうのは凸版印刷株式会社。

カバー、本文、帯、それぞれに印刷される日時が違います。今回は、書店で一番重要視されるカバーデザインの印刷工程を見学させていただきました。

やってきたのは凸版印刷の板橋工場。僕以外にも、出版社の編集者とデザイナーが同行しました。数多くの本をつくっている彼らも通常、印刷会社まで来ることは、ほとんどないそうです。

凸版印刷の営業担当・中田良さんの案内で、会議室で待機していると、やがてカバーデザインが4面印刷されたシートが、印刷オペレーターの方々により運ばれてきました。
最終チェック用のシートです。デザイナーがチェックし、オッケーのサインをします。これで責了。本番の印刷にまわされます。

ここから印刷工場の中へ。本来関係者以外は立入禁止。よって撮影も禁止。今回は特別に見学させていただきました。

大きな印刷工場というと、輪転機のイメージがあったのですが、それは大部数の新聞やチラシなどの場合。今回使われるのは、オフセット枚葉機という印刷機。

機械に近づいていくと、『シナリオノート』のカバーがどんどん排出されています。機械上部にあるデジタル表示にPPM186という数字。これは、1分間に刷る枚数のこと。刷るモノにより、最適な速度は変わるとのことです。

刷り上がってくる紙を、オペレーターがルーペなどで何度もチェックします。そのたびに微調整して、オッケーが出たシートの色調に合わせていきます。試し刷りだけで何と600枚近くも刷るとのこと。今回、『シナリオノート』のカバーは、微妙な色合いがあるため、とくに難しいらしいです。

色を合わせていく過程は、オペレーターの最大の腕の見せ所。なぜなら、印刷は、気温、湿度などによっても大きく影響されるからです。湿度が高いと、インキが乾きにくいので、擦れて汚れてしまいやすくなる。乾燥しすぎると、今度はインクを厚く盛った場所がひび割れしやすくなる、といったトラブルが起きやすくなるのです。

そんな時に頼りになるのが、オペレーターの経験や微妙な感覚。「紙は生き物なんです」という中田さんの言葉が強く印象に残りました。どんなに技術が進化しても、すべてデータでやりとりされているようになっても、最終的には人間の感覚が頼りというのは、やはりおもしろいものですね。

本文は四六全版という大きなシート一枚に、64ページ分を一気に刷ります。このままでは折り畳めないので、4つに分け、16ページごとに切り分けられます。

こうして印刷されたものが集められて、製本されていきます。今回、「シナリオノート」の製本現場を見ることができませんでしたが、他の本の製本現場を見学させていただきました。

工場に入ると、ちょうどある本が製本されている所。本文が16ページごとに折り畳まれて順番に並べられています。それが機械でどんどん送られていき束になって重ねられます。そして3方を裁断し、本が完成。人の本なのになぜか感動してしまいます。あとはカバーをかけて帯をかけてでき上がり。書店用の伝票なども入れられていきます。

これらの印刷・製本の工程こそが、本と電子書籍との一番違う部分。ということは、最大の差別化のポイントになる可能性がある部分でもあります。著者も編集者も、この印刷製本過程で何か面白いことができないか、もっと真剣に考えるべきでしょう。

例えばですが、カップラーメンなどが地方によって味やパッケージを変えているように、書籍も地方や書店の客層によってカバーデザインや帯のキャッチコピーを変えてみる。コアラのマーチのまゆげコアラのように、レアな一冊を混ぜてみる。慣例にとらわれなければ、いろいろなアイデアはきっと出てくるはずです。

次回は、名前はよく聞くけど、実際にどんな所なのか、あまりイメージできない「取次」です。

(川上徹也)

(2010/9/15更新)
 
 川上徹也氏のプロフィール
 
ストーリーの力で、会社・商品・個人を“売れ続けるブランド”にするクリエイティブディレクター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。2008年よりビジネス書作家としても活躍。著書『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』(クロスメディア・パブリッシング)『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)など多数。

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