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第3回 取次会社との部決交渉
(本紙「新文化」2010年9月16日号4面掲載)

9月11日発売の拙著『イメージ通りに仕事が運ぶ ビジネスマンのシナリオノート』(以下『シナリオノート』)の川上から川下までを体験する旅。印刷・製本された本ができ上がり、いよいよ取次にやってきました。

取次は、本の問屋であり、大きく分けると以下の3つの機能があります。(1)本を仕入れ、書店に配本したり返品を受け付けたりする物流機能。(2)代金の回収や支払いを代行する金融機能。(3)出版社の新刊情報や、書店での売上げ状況を把握・分析して、それを互いに共有させる情報提供機能。

実際に、本が印刷・製本され取次の倉庫に搬入される前に、出版社と取次の間で行われる「見本だし」と呼ばれる重要な儀式(?)があります。できたての書籍を取次の窓口に提出し、その場で取引のある書店に配本される部数が決まるらしいのです。

それはぜひ一度、体験してみたい! ということで、今回、特別に、東京・御茶の水駅前のビルにある日本出版販売株式会社、通称「日販」さんにやってきました。今回も出版社のクロスメディア・パブリッシングの小早川幸一郎代表と同行です。通常の出版社だと、これは営業部の仕事ですが、小早川さんは社長、編集、営業を兼ねているスーパーマンなのです。

書籍部の仕入窓口に着くと、すでに大勢の出版社営業担当者が椅子に座って順番を待っていました。なんとなく市役所の窓口での順番待ちを連想させます。順番がまわってきて、私たちの番に。対応していただいたのは、書籍部書籍仕入第二課の藤原道悦さん。

小早川さんが今朝できたてほやほやの『シナリオノート』を藤原さんに差し出します。藤原さんは「著者の方がいるとちょっとやりにくいですね。でも部決は変わりませんよ(笑)」と言いながら、淡々と対応。まずは、本として、間違いや漏れがないかのチェック。著者名、価格、ISBNコードなど、必要最低限の情報がちゃんと入っているかどうかを確かめます。さらに藤原さんは、メジャーを取り出し、『シナリオノート』のサイズを計っていきます。縦横のサイズはもちろん、厚さまで計るとは驚き。まるで自分の子どもが身体測定されている気分です。ごく稀にですが、何かが抜け落ちていて、印刷がストップされ、発売日が延期になることもあるようです。『シナリオノート』は、何とか無事通過しました。

さて、ここからいよいよ「部決交渉」に入ります。通常、まずは出版社が本のPRをします。類書の過去の売行きデータや著者の知名度、ポテンシャル、出版社が仕掛ける広告などのマーケティング活動をアピール。通常、出版社はできるだけ多く書店に並べたい。取次は返品率のことも考え、適正な部数に抑えたいという攻防があります(発売前から書店注文が殺到している本の場合は、逆の攻防になる場合もあると聞きます)。

この時、出版社が事前に書店からの注文を集めておくと、その書店に関しては、優先して指定冊数分を配本してもらえます。ある意味、出版社が主導権を握ることができると言えるでしょう。

『シナリオノート』の部決交渉に関しては、今回、出版社が書店からの事前注文をたくさん取ってきてくれていました。そんな効果もあってか、とくに激しいやりとりもなく、出版社の希望通りの部数で決まりました。

事前にいろいろな人から、「取次の窓口はお役所的」だと聞かされていましたが、今回の印象はそうでもありませんでした。『シナリオノート』以外の売れ筋の本に関しても、藤原さんは、再配本の件などで親身になって出版社の相談に乗っていました。

ただ「取次」が果たす役割について、正直言うと今回の体験だけではわからない部分がいっぱいあります。出版社にも話を聞きましたが、分からないことが多いという印象でした。大手取次は平均的な出版社や書店に比べて格段に大企業であるにも関わらず、その実態は一般的にほとんど知られていないということです。

逆に言えば、出版社も書店も取次のことをもっと把握することができれば、面白いアイデアを3者で実現できる可能性があります。今後、書店や出版社は、ますます取次会社との情報共有、密なる協力関係というものが求められてくるのではないでしょうか?

また、著者本人が配本や販売に関して提案できるシステムがあればいいなと真剣に思いました。

(川上徹也)

(2010/9/21更新)
 
 川上徹也氏のプロフィール
 
ストーリーの力で、会社・商品・個人を“売れ続けるブランド”にするクリエイティブディレクター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。2008年よりビジネス書作家としても活躍。著書『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』(クロスメディア・パブリッシング)『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)など多数。

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