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第1回
謎多い子どもの本の世界、「強い本」の秘密に迫る
 子どもの本の世界には謎がある。
 
 たとえば毎日新聞社と全国学校図書館協議会が毎年行っている「学校読書調査」掲載の、小中高校生が「読んだ本」ランキングの最新2018年分と5年前の2014年分を見比べてみよう。
 
 18年調査では、小学生男子部門では韓国発の学習マンガ「サバイバル」シリーズ(朝日新聞出版)や「発明対決」シリーズ(同)が人気だ。これらは14年調査ではトップ10に1冊も入っていない。韓国学習マンガが日本市場をものすごい勢いで席巻しているわけだが、実は著者のゴムドリのインタビューは、日本語ではほぼ読めない。作品だけが流通し、その背景はほとんど知られていない。
 
 18年調査では、小学校男女ともにヨシタケシンスケの絵本も人気だが、14年調査ではヨシタケ本のみならず、絵本はトップ10にほとんどない。小学校高学年も読む絵本の市場が急速に大きくなったと推測されるが、これもどんな流れでそうなったのか、皆さんはご存じだろうか?
 
 定番作品にも謎がある。
 
 たとえば小5から中2までに人気の宗田理「ぼくら」シリーズ(KADOKAWA)。ほかにいくらでも思春期向けの作品、それも今の10代に向けたものがあるだろうに、どうして「ぼくら」はシリーズ開始から約35年も経つのに、今なお支持されているのか?
いまどきの小学生に人気のヨシタケ本
 
 さらに、ここ5年で定番化したものに、じん(自然の敵P)の「カゲロウデイズ」がある。ボーカロイドで制作した楽曲を原作にした、いわゆるボカロ小説で今も人気なのは、HoneyWorksの「告白予行練習」シリーズ(KADOKAWA)と「カゲロウデイズ」シリーズ(同)だけだ。しかも、HoneyWorksは今も活動中だが、「カゲロウデイズ」は完結し、映像化企画ももう動いていない。にもかかわらず、本が動くのはなぜだろう?
 
 「子どもの本」は、読者である子どもの欲望と、親族や教師、司書(図書館業界)など大人の思惑との駆け引きがあり、ホビー、ゲーム、TV、ネット、ファッション、教育産業などと絡み合うことで成立している。子どもの本の世界に散らばる謎に迫るには、こうした力学を解きほぐす必要があるだろう。
 
 また、長らく「子ども向けコンテンツはデジタルマーケティングが及ばない」といわれてきたが、内閣府の調査では小学生のスマホ所有・利用率が5割を超え、小学生がなりたい職業の上位にYouTuberが挙がることを思えば、その認識は急速に過去のものになりつつある。新たなデバイス、プラットフォーム、アプリが次々に登場し、メディア環境が激変するなかで、衰退したものもあれば、新顔ヒットや変わらぬロングセラーもある。

(飯田一史・ライター)

(2019年4月11日更新  / 本紙「新文化」2019年3月28日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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